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小さな国の賢い戦略、台湾の成功を行政トップに聞く半導体業界をいかに生き抜いたか(2/3 ページ)

» 2018年05月24日 11時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

台湾の戦略

EE Times:海外で人材を探し、台湾に連れてくるというのは、かつて台湾政府がMorris Chang氏をヘッドハントしたことを思い出させる話です。それと同じ戦略ということですか?

Chen氏:ある意味ではそうだ。われわれは優れた人材を雇い入れる準備ができている。例えば、台湾政府がChang氏に故郷へ戻ってくるよう求めた際、同政府はChang氏が既にTIで上級職に就いていたことを把握していた*)

*)編集者注:Chang氏は1958年から1983年までTIで25年に及ぶキャリアを重ね、全世界の半導体事業の責任を負うグループバイスプレジデントにまで昇進していた。

 Chang氏の経験と希望に見合うよう、台湾政府は同氏に工業技術研究院(ITRI)のチェアマン兼プレジデントというポジションを与えた。

EE Times:台湾はChang氏という大きな価値を得たのですね。

Chen氏:Chang氏をヘッドハントするのと並行して、台湾政府は自国の半導体産業を立ち上げるための基礎作りを進めていた。1976年、同政府は30人近い台湾人エンジニアを、米国のエレクトロニクス企業RCAに派遣した。当時RCAは初期の半導体分野をリードしていた。同時に、台湾で約30人のエンジニアから成るチームも作り、米国から戻ってきたエンジニアたちとともに働けるように準備させていた。

EE Times:その頃は何をしていたのですか?

*)編集者注:Chen氏は1979年に国立成功大学の電子工学部で理学士号を得た後、1981年に理学修士、1986年には博士号をそれぞれ取得した。

Chen氏:当時私は学生だったが、あの頃は本当にエキサイティングな時代だった。米国から戻ってきたエンジニアたちも、台湾にとどまったエンジニアたちも、どちらもとても精力的で、活力あふれるチームだった。

EE Times:TSMCと、何か接点はあったのですか?

Chen氏:接点はあった。国立成功大学で博士号を取得しようと学んでいた時、同じクラスにF.C. Tseng氏がいた。

EE Times:Morris Chang氏とTSMCを共同で設立し、現在は同社のバイスチェアマンを務めるTseng氏のことですか?

Chen氏:その通りだ。Tseng氏は台湾でとても良く知られた人物だ。TSMCで技術や研究開発(R&D)を担当したTseng氏は、私の元クラスメイトだ。

若い才能を国外に送り出す

EE Times:若者を米国に送り出して勉強させるという方法は、台湾で実を結んでいますね。現在は、何をなさっているのですか?

Chen氏:MOSTでは2018年、「LEAP(Learn, Explore, Aspire, Pioneer)」という新しいプログラムを創設する予定だ。この計画の下、台湾は100人の人材を米国やフランス、イスラエルに送り、ベンチャーや企業戦略プロジェクトなどについて学ばせる。送り出すのは、起業を視野に入れている、博士号またはそれと同等レベルの知識、経験を持つ人材が中心だ。われわれは、将来有望な若者をさまざまな国で学ばせることが、台湾の成長に大いに貢献すると確信している。

 さらにMOSTは、2018年6月に、新しいアクセラレーター施設であるTaiwan Tech Arenaを台北で開設する。

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