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» 2018年08月21日 10時00分 公開

Vicor コーポレートバイスプレジデント Robert Gendron氏:48Vから1Vに直接変換、次世代電源システム向け製品で際立つ存在感 ―― Vicor

パワーコンポーネント製品を専門に手掛けるVicorは、より高効率、高電力密度のDC-DCコンバーターなど、時代のニーズに沿ったパワー製品の開発に取り組んでいる。同社の製品において特に注目度が高いのが、データセンターや自動車の分野で採用が進んでいる48Vシステムに向けたソリューションだ。Vicorのコーポレートバイスプレジデントを務めるRobert Gendron氏に、48Vシステム市場を中心に、パワー製品を取り巻く技術動向と、同社の開発戦略を聞いた。

[PR/EE Times Japan]
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あらゆる分野においてパワーコンポーネント製品の需要が高まる

――直近の業績を振り返ってください。

Robert Gendron氏 2018年第2四半期(4〜6月期)の業績を2018年7月に発表したばかりだが、四半期で過去最高の売り上げを達成することができた。売上高は7419万6000米ドルで、前年同期比で28.6%増加している。

――好調な業績の主な要因を、どのように分析していますか。

Gendron氏 データセンターから自動車、LED照明、通信機器、FA(Factory Automation)、民生機器まで、あらゆる分野においてパワー製品の需要が増していることが大きなけん引力となっている。

 例えばデータセンターでは現在、データのマイニングや分析に機械学習などのAI(人工知能)が使われるようになってきている。特に、ハイパースケールデータセンターと呼ばれる大規模なデータセンターでは、この動きが顕著だ。データセンターに必要な電力は数年前の3〜4倍ほどに増加しつつある。自動車業界では、システム電圧を従来の12Vから48Vに高めることで高効率化を図る、「48Vマイルドハイブリッドシステム」というトレンドがある。

 どの業界でも必要な電力はますます増加しており、特に、同じサイズの電源回路基板(フォームファクタ)で、より多くのパワーを出力できる技術が求められるようになっている。

――サイズは維持するという流れの中で、どのように、より高い電力を提供できるのでしょうか。

Gendron氏 電力損失を低減するというのが基本的な考え方だが、大きく2つの方法がある。まずは、48Vシステムへの移行だ。数年前までは、12Vの電源システムを利用することが一般的だったが、現在は、先ほど話したようにデータセンターや自動車の分野などで、48Vシステムへと移行が始まりつつある。12Vから48Vに電圧を高めることで、電流値は4分の1に、電力損失は16分の1にまで低減できる。

 もう1つが、電力密度と効率がより高いDC-DCコンバーターを使用することだ。コンバーターの発熱が減るので、負荷により近い位置にDC-DCコンバーターを実装できるようになり、負荷ポイントとの間で発生する配電損失を低減することが可能だ。

48V→1Vに直接変換、部品点数が大幅に削減

――そのような技術を実現している、Vicorの具体的な製品について教えてください。

Gendron氏 特にデータセンター市場向けとして提供している製品が、48Vから、AI向けCPUやGPUが一般的に必要とする1V以下に直接変換するアーキテクチャを用いたDC-DCコンバーターシリーズだ。しかも90%以上という、従来の12Vシステムから変換する時と同等レベルの高い効率を維持している点も特長になっている。

 48Vから1Vへと一気に降圧するコンバーターは、約10年前に米スーパーコンピュータ(スパコン)向けとして開発した技術で、大容量のデータセンターにおける48Vサーバラックなど既に多くの採用実績がある。最も新しい採用事例は、人工知能およびHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)アプリケーションに給電する大電流の変換用途だ。

 48Vシステムから、CPU/GPU向けに1Vに降圧する場合、いったん12Vに降圧した後、複数の電源回路を並列に接続するマルチフェーズ方式のPOL(Point of Load)コンバーターを用いて1Vに降圧するのが一般的だ。だが、100A、用途によっては400Aといった大電流をCPUやGPUに供給することが必要になってきている今、同じフォームファクタを維持したままでは、これ以上フェーズを増やすことができないという課題を抱えている。

 そこで、当社の製品が力を発揮することになる。例えば、NVIDIAの12V入力のGPUカード「SXM2」は、16フェーズのマルチフェーズ方式を用いている。つまり、16個のレギュレーターと16個のパワーインダクターという計32個の部品が搭載されている。

 一方、2018年5月にNVIDIAが開催した「GTC(GPU Technology Conference) Taiwan」で紹介された新しい「SXM3」GPUカードでは、16フェーズ分の32個の部品をわずか3個の変換コンポーネントに置き換えられている。

写真左が「SXM2」、右が発表されたばかりの「SXM3」。GPUカード自体のサイズはまったく同じだ。SXM3に、48Vソリューションが採用されている

――48Vから1Vへの変換コンポーネントについて、もう少し具体的に教えてください。

Gendron氏 「MCD(Multiple Current Driver)」と「MCM(Multiple Current Module)」から構成されるチップセットだ。1個のMCDと2個のMCMが使われている。MCDはマザーボード上に実装され、一方のMCMは、サブ基板上のCPU/GPUの近傍に実装することができる。

 基本的な仕組みは、MCDに48Vを入力し、MCDがMCMを高精度に制御することで、MCMから負荷に電流を供給するようになっている。MCDは最大650Wを出力でき、MCMは1個当たり最大300Aの連続電流および最大500Aのピーク電流を供給できる。

――コンバーターと負荷の間で発生する配電損失を低減する技術については、いかがでしょうか。

Gendron氏 これまではマザーボード上に実装していたコンバーターを、CPU/GPUと同じサブ基板上に隣接して実装できる、「PoP(Power on Package)」という技術を持っている。従来のようにマザーボードにコンバーターが配置されている場合、サブ基板上の負荷までの約1インチという距離で、配線抵抗による配電損失が発生する。PoPは、この“ラストインチ”での損失を解消できる技術だ。

「Power on Package」のイメージ。これによって“ラストインチ”を解消できる

――48Vソリューションへの関心が高いことが分かりました。MCD/MCMのチップセット以外には、48V関連ではどんな製品がありますか。

Gendron氏 48Vの給電システムへの移行は始まっているが、12Vの給電システムのボード設計を変更したくないユーザーや、12Vの給電システムを使い続けたいユーザーもいる。そのようなユーザーに向けて、48V/12V間で双方向に電力を変換する非絶縁バスコンバーターモジュール「NBM2317」を開発した。2018年6月にドイツ・ニュルンベルクで開催されたパワーエレクトロニクスの展示会「PCIM 2018」で発表したばかりの製品だ。

 23×17×7mmというわずかな実装面積ながら750Wを供給でき、48Vから12V、12Vから48Vの双方向において98%のピーク効率を達成している。この小型モジュールを1個追加するだけで、48Vシステムを既存の12Vシステムに容易に採用することが可能になる。48Vシステムへの移行期間である現在、新旧システムの“橋渡し”をする中間バスコンバーターはニーズが高まっている。NBMは、こうした多くのユーザーの助けになっていると自負している。

――Vicorでは、売上高の約16%をR&D(研究開発)に回しています。特にどういった開発に注力しているのでしょうか。

Gendron氏 デバイスはもちろん、パッケージの開発にも力を入れている。Vicorには、表面実装タイプの「SM(Surface Mount)-ChiP」というユニークなパッケージング技術がある。先ほど話した、MCD/MCMにも使われている技術だ。

 中央にプリント配線板(PCB)があり、その上下に抵抗やキャパシター、半導体、磁性体といった部品を実装して樹脂モールドで覆う。PCBを樹脂モールドで上下から挟むサンドイッチ構造になっている。一般に「3Dパッケージ」というと、PCBの上にチップを積み重ねていくが、これだとパッケージ内の熱密度が上部に偏るという問題がある。一方でSM-ChiPは熱密度がパッケージ内で均一になるので、パワー製品に向いているパッケージング技術だといえる。

 SM-ChiPは、まずはパネルのような長方形の基板に実装される。基板にホールを開け、そのホールの中央に沿って切り出していく。切り出した後、そのホールの部分(半円になっている)が端子になって、基板に実装できる。

「SM-ChiP」を切り出すイメージ。ウエハーではなく、このようなパネルに部品を実装して切り出していく

2つ目の工場の建設へ

――その他の投資についてはいかがでしょうか。

Gendron氏 当社は現在、本社のある米国マサチューセッツ州アンドーバーに工場を所有しているが、48Vソリューションを含めたパワー製品の強い需要を受けて、2つ目の工場を建設する予定になっている。同工場の生産能力はまだ明かせないが、延床面積は1つ目の工場と同等レベルの約2万3000m2となる予定だ。

――今後の事業方針や製品ロードマップについてお聞かせください。

Gendron氏 パワーコンポーネント専業メーカーとして、高効率、高電力密度の製品を開発し、提供していくという方針を今後も貫いていく。いずれは1000Aの電流供給が必要になるであろうハイパースケールデータセンターのように、市場の要求に合わせて、同じサイズあるいは小型のフォームファクタで、より大電流、大電力を提供できるような製品の開発を続けていく考えだ。われわれの製品が、同じフォームファクタで、より多くの電流、電力を供給できるようになれば、エンドカスタマーが自らの製品を差異化し、イノベーションを作り出すことに貢献できると確信している。


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提供:Vicor KK
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2018年9月20日


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