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Intel 10nmプロセスの遅れが引き起こしたメモリ不況湯之上隆のナノフォーカス(7)(2/4 ページ)

» 2018年12月07日 11時30分 公開

NANDフラッシュの市場動向

 四半期ごとのNANDフラッシュ市場の推移を見てみると、2016年第1四半期以降、急拡大していた市場が、2018年に入って足踏みしていることが分かる(図2)。

図2 世界のNANDフラッシュ売上高の推移(億米ドル) 出典:Statistaのデータを基に筆者が作成(クリックで拡大)

 その足踏みの原因は、NANDフラッシュ価格の下落にある。DRAMeXchange によれば、2017年9月に76米ドルを超えていた256ギガビットNAND(TLC:Triple Level Cell)を搭載したSSDの価格は、2018年5月に65米ドルに低下し、さらに価格下落が続いている模様である。

DRAM市場動向

 DRAM市場も、2016年第1四半期から爆発的な成長が始まった(図3)。その成長は、2018年第2四半期まで続いている。

図3 世界のDRAM売上高の推移(億米ドル) 出典:Statistaのデータを基に筆者が作成(クリックで拡大)

 DRAMeXchangeによれば、モバイル用、PC用、サーバ用のどのDRAMも、2016年6月以降、価格高騰が続いていた。ところが、そのDRAMeXchangeは、2018年第4四半あ期にDRAM全体の平均価格が、「1〜3%下落」から、「5%下落」に下方修正する予測を発表した(表1)。

表1 DRAM価格の予測 出典:DRAMeXchange

 DRAMeXchangeはこの原因が、NANDフラッシュ同様、需要に対して供給量が上回るためであると推測している。さらに、「2019年に向けて、DRAMサプライヤーは1X/1Yプロセスへの移行を進めており、SK hynixの中国・無錫工場も生産体制に移行する予定となっていることから、業界全体の供給の伸びが需要を上回り、全体的なDRAM価格は、2018年比で15〜25%程度下落すると予測している」(PC Watch 2018年8月20日、佐藤岳大)との観測もある。2019年はDRAM価格が暴落するというのである。

ビッグデータの時代に入ったのになぜ?

 ここまで、2018年に入ってメモリ市場に成長に陰りが見え始め、その原因が供給過剰によりNANDフラッシュやDRAM価格の低下にあることを概観した。

 しかし、冒頭で述べた通り、「供給過剰」ということが、いまひとつ腑に落ちないのである。

 元を正せば、人類が生み出すデジタルデータ量が指数関数的に増大しており、このビッグデータをストレージしてビジネスに有効利用するというところから話は始まっている。

 このビッグデータは、東京五輪が開催される2020年には44ZBになり、それ以降も指数関数的に増え続ける。このビッグデータの増大が止ることはあり得ない。そして、2020年には図1に示すような世界が現実になる(もう既にほぼそうなっている)。

 これらネットデバイスやセンサーからのデータを、世界中のデータセンタのサーバがストレージする。そのために、途轍もない台数のサーバが必要になっており、それには大量のNANDフラッシュが必要である。

 また、DRAMも足りない。そのため、Google、Amazon、Microsoftなどのクラウドメーカーが“Samsung Electronics詣で”を行い、個数でなくウエハー単位で最先端DRAMを求めるという事態になった。その結果、Googleは、Samsungから、毎月2万枚のDRAMを購入する契約を締結した(日経新聞電子版2018年1月8日)。

 ところが、DRAMもNANDフラッシュも、供給過剰により価格が下落している、または今後下落するという。本格的なビッグデータ時代に突入し、クラウドメーカーが猛烈な勢いでデータセンターを建設するというのに、なぜメモリが供給過剰になるのだろう?

 クラウドメーカーがデータセンターの建設を止めたのだろうか? しかし、Google、Microsoft、Facebook、Apple、Amazonのトップ5社のデータセンター建設の設備投資は、少なくとも2018年第2四半期までは右肩上がりに増大している(図4)。

図4 クラウドメーカーの設備投資 出典:Synergy Research Group(クリックで拡大)

 クラウドメーカーの設備投資が旺盛なのに、メモリが「供給過剰」というのは、やはり解せない。このようなギャップは、なぜ生じるのだろうか?

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