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2019年も大注目! 出そろい始めた「エッジAIプロセッサ」の現在地とこれからこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(31)(1/3 ページ)

2018年に登場したスマートフォンのプロセッサの多くにAI機能(機械学習)を処理するアクセラレーターが搭載された。そうしたAIアクセラレーターを分析していくと、プロセッサに大きな進化をもたらせたことが分かる。こうした進化は今後も続く見通しで、2019年もAIプロセッサに大注目だ。

» 2019年01月10日 09時30分 公開
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 2018年は多くのチップにいわゆるAI機能(機械学習)のIPが搭載された。スマートフォンのプロセッサを手掛けるMediaTekやQualcomm、Samsung ElectronicsらもAI機能への対応に全力で取り組んでいる。MediaTekのプロセッサ「HELIO P60」や「HELIO A22」、Qualcommの「Snapdragon 845」などは強化されたAI機能で顔認証、指紋認証などの他、写真の高度化などの処理も行っている。

図1:AIプロセッシングを実行する演算器の関係 (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 図1は、2018年に登場した多くのプロセッサが搭載した演算器の種類とその大まかな関係である。横軸は専用性の高さ、縦軸は汎用性の高さを表している。実際には機能を内包する場合もあるので、あくまでも概念として見ていただきたい。汎用性の高いCPUはAI処理には不向きで、AI処理はGPUやDSPで行うケースが多かった。しかし整数8ビット、4ビットのような演算器を用いてより専用的な演算を行うNPU(Neural Processing Unit)を各社用いるようになっている。NPUという名前で活用するメーカーもあれば、APU(AI Processing Unit)と呼ぶ会社もある。専用性の高いものはAI処理に長けており、小さな演算を素早く行うことで、処理時間も短く、消費電力も小さい。横軸の右に行くほど電力効率と処理速度が良い。これは概念図なので消費電力をうまく表現できていないが、その電力性能は、CPUなどと比べて桁が異なる程度だと認識してもらえれば、と思う(電力性能を入れた図にすると上下が離れすぎてしまうため)

期待したい日本発のAIアクセラレーター

 CPUと言えばx86、Arm、RISC-V、MIPSなどがある。GPUはNVIDIA、Imagination Technologies、Vivante、Armなど、DSPはCEVAやTensilicaなどのメーカーのものが用いられることが多い。NPUもIPベンダーや専用IPも増えている(詳細は省略)。スマホなどでは専用アクセラレーターとしてIPベンダーのDSPやAI-IPが用いられる。上記のほとんどは欧米を中心とした海外製だ。しかし図1の円形で表現した日本発のAIアクセラレーターも登場し始めている。

 ルネサス エレクトロニクスは2017年からe-AIと命名したAIに取り組んでいる(図中のピンクの円:ルネサス発表資料から読み取った性能を図中に入れた)。リコンフィギュラルプロセッサを核にして電力性能の良いDRP(Dynamically Reconfigurable Processor)コアを展開している。専用アクセラレーターに匹敵する性能を目指すという。既に第2世代までのチップができている。このDRPについては2019年に詳細な解析を行う予定である。もう一つの日本発のAIアクセラレーターが、図1に大きな黄緑色の円で示したデンソー傘下の半導体IP開発会社エヌエスアイテクス(NSITEXE)が2018年12月に発表したDFP(Data Flow Processor)である。詳細はぜひNSITEXEの発表をご覧いただきたい。DSP機能をほぼ内包しGPUから専用NPUまでをカバーする演算器として開発されている。電力性能と方式性能のバランスがルネサスのDRP、NSITEXEのDFPともに良い。

 過去10年、日本の半導体メーカーは自前のキラーIPをほとんど生み出しておらず、海外の標準IP(先述)を買ってきて並べてつないでいるだけになっている傾向が強い。こうした状況下でルネサスやNSITEXEらが新規IPの開発に乗り出していることは極めて良いニュースだと思う。

 今や半導体の多くは規格化されたインタフェース(アナログも含む)と機能IPを並べてつなぐだけになりつつある。IPそのものの開発にはIntel、NVIDIA、Qualcomm、Armらと言った強豪がひしめているが、日本メーカーはあまり大きなアドバンテージを持っていない現実がある。IPを作ることはハードの開発だけでなくライブラリー、コンパイラー、ソフトウェア、開発キットなど多岐に渡るプラットフォームと実績を積み上げていくことなので(応用技術も含めて)プラットフォーム視線をきちんと根付かせることも重要になる。ルネサスやNSITEXEにはやり遂げる力があるだろう。両社の取り組むAI-IPの2019年以降の躍進は注視したい。同様にRISC-Vの動向も注目に値する!! (こちらはいずれ報告したい。ちなみに、筆者が代表を務めるテカナリエはRISC-Vのシルバースポンサーを2017年から務め、RISC-Vを用いたプラットフォーム開発にも寄与している)

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