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Vicorが自動車市場に参入、12Vから48V給電時代へVicor グローバルオートモーティブビジネスデベロップメントVP Patrick Wadden氏

Vicor(バイコー)は、48V電源ソリューションやモジュール型パワーソリューションなどの製品を開発し、パワーコンポーネントの専業メーカーとして着実な成長を続けている。そのVicorは2019年から、自動車市場への参入を本格化させる。VicorでオートモーティブビジネスのVP(統括責任)を務めるPatrick Wadden氏に、自動車市場参入における戦略やキープロダクトについて聞いた。

» 2019年01月16日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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世界各国の市場で成長

――2018年の業績はいかがでしたか。また、その業績の要因をどのように分析していますか。

Patrick Wadden氏 2018年は、世界各国でVicor製品の支持が増え、著しく成長ができた1年となった。特にデータセンターやAI(人工知能)の分野で、48VからPoL(Point of Load)に直接変換する当社のパワーソリューションが加速的に成長をけん引した。

 こうした背景の一つに、Vicorは従来のディスクリート部品ベースの電源システムから、モジュール型電源コンポーネントへの移行を推進してきたことがある。Vicorのモジュール型電源コンポーネントへの有用性が広く理解され、多くの新しい産業アプリケーションにおける支持につながった。その結果、2018年第3四半期(2018年1〜9月)の売上高は、前年同期に比べて30%増と大きく伸びた。

自動車市場に本格参入

――今後のVicorの大きな動きとして、自動車市場への参入があります。なぜ、自動車分野を狙うのでしょうか。

Wadden氏 車の電動化には、既存の12V電源システムに比べ、Vicorの独自技術である48V分散アーキテクチャが適している。既に48Vコンバータは、データセンター向けサーバやAI向けGPU/CPU電源として導入が始まりつつある。

 データセンターやAI分野におけるニーズ拡大により、多品種少量生産(ハイミックス・ローボリューム)から、少品種大量生産(ローミックス・ハイボリューム)へとVicorのビジネスモデルが変わりつつある中で、量産規模が大きい市場で高い成長を見込める新しいアプリケーションの開発を狙う。

――2019年における、自動車分野向けの事業戦略をお聞かせください。

Wadden氏 Vicorは、高密度で高効率なコンバータおよびレギュレータを提供するメーカーである。サイズと重さ、コスト低減が求められる車載用の電源システムに焦点を当てる。自動車メーカー(OEM)やTier 1企業と密に連携をとり、電動化に向けたソリューションの提供を目指す。

48V対応製品がキープロダクトに

――自動車向けビジネスで、キーとなる製品は何でしょうか。

Wadden氏 キープロダクトは一つではない。当社がもつ高密度コンバータ、レギュレータの製品ラインアップのいくつかが車載規格に適合している。約200Wから数kWまでの幅広い電力範囲に対応する、DC-DCコンバータ、バスコンバータ、または48Vから12V、12Vから48Vへの双方向変換可能な製品が重要になるとみている。

 車載向け製品は、電子・電気コンポーネントの共通規格であるGM規格「GMW 3172」に基づいた環境耐久性の試験を行う。48V/12V間で双方向に電力を変換する、非絶縁バスコンバーターモジュール「NBM2317」は、2019年春頃には、車載規格に対応する見込みだ。

非絶縁型バスコンバーターモジュール NBM2317- 3.27cm3 のパッケージサイズで、連続800W、ピーク時1kW、98%の効率を実現している

 また、車載向けの品質規格であるAEC-Q100に準拠した、出力電流5〜15AのZVS(ゼロ電圧スイッチング)昇降圧レギュレータSiP(System in Package)製品も開発しており、間もなく発表される予定だ。さらに、車載に対応する製品として多様な機能や仕様の製品を2019年は随時リリースしていく。

――自動車分野におけるVicorの強みは、どんなところだとお考えですか。

Wadden氏 Vicorの強みは、航空宇宙/防衛分野で長年蓄積してきた専門知識と技術開発力だ。防衛関連では、過酷な環境条件下に適応できるアプリケーション開発の実績があり、自動車分野でもこれが生かされるだろう。

 航空機向けコンピュータや装備品、通信機器、ジャマーや防衛システム、UAV(無人航空機)などのアプリケーションでは、世界トップレベルの製造技術や、最高品質および信頼性が必要とされてきた。例えば、航空機への搭載機器は、万一の事態での安全性の確保が重要であり、航空機向けコンピュータでは、十分な冗長性確保のために3つの異なる電源から同時に電力を取る必要がある。こうした機器の電源は、冷却ファンを使用せずに高温環境でも動作する必要があり、小型かつ軽量でなくてはならない。Vicorはこのような航空機メーカーにパワーソリューションを提供している。

 Vicorは、安全が第一に優先される車載アプリケーションに生かせる実績や冗長運転の経験を既に持っている。車載向けビジネスの拡大とともに、蓄積したベストプラクティスを応用し、自動車だけでなく全ての分野において継続的な改善を図っていく。それにより、車載向けのソリューション提供能力も、新たなレベルに到達できるだろう。これは、他のエンドマーケットにおいても、Vicorがさらに強力な企業へと発展できる機会となるはずだ。

――車載向け製品のロードマップについてお聞かせください。

Wadden氏 車載向け製品ロードマップと戦略は、より大電力、高密度で信頼性の高いモジュール型パワーソリューションやコントローラーICを発表していく予定だ。さらに、自動車分野における新しい市場やアプリケーションのビジネスを拡大すべく、ライセンシングやパートナーシップの強化も考えている。

 絶縁型、非絶縁型、DC-DCコンバータ、バスコンバータのモジュール型パワーソリューションは、800Wから3kWまでの幅広い仕様の製品を、引き続き精力的に展開していく。

絶縁型DC-DC コンバータDCM3623- 入力電圧43〜154Vに対応し、最大電力320W。コンパクトでありながら、効率93%、電力密度は653W/inch以上を実現している

世界的な自動車市場を持つ日本への期待

――日本には大規模な自動車ビジネスがあります。日本での自動車ビジネスについては何を期待されますか。

Wadden氏 世界的な自動車メーカーを持つ日本では、Vicorにとって、自動車業界について学んだり、パートナーを見つけたりするチャンスがあるとみている。われわれは、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)市場向けの製品について、パートナーシップや共同開発の機会を探っている最中だ。こうした提携や共同開発は、当社が早期に市場けん引力を付けるための一助となるだろう。

 既に、完全自動運転車(自動運転レベル5)の開発プロジェクトで、日本の自動車メーカーと協業し、Vicorの10出力/3.6kWの電源コンポーネントを使った開発を進めている。この電源は10個の出力を個別にプログラムできるもので、ハイパワーな自動運転車の製造開発に適している。

――2019年におけるエレクトロニクス市場、とりわけ電源分野の市況をどう見ていますか。

Wadden氏 2019年のエレクトロニクス市場は、2018年ほどの成長が遂げられるかはあやしい。ただしVicorは、成長が著しい市場やアプリケーションに向けて新製品を開発していることもあり、2018年に引き続き、堅調な成長が期待できる。ありがたいことに、新規顧客の問い合わせが増えており、Vicorの技術に対する需要や期待が大幅に増加していると実感している。


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提供:Vicor KK
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2019年2月15日



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