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» 2019年01月22日 14時30分 公開

湯之上隆のナノフォーカス(8):米中ハイテク戦争の背後に潜む法律バトル (2/4)

[湯之上隆(微細加工研究所),EE Times Japan]

通信基地局を制するHuawei

 2017年の通信基地局の企業別売上高シェアを図1に示す。シェア1位が中国のHuawei(27.9%)、2位がスウェーデンのEricsson(26.6%)、3位がフィンランドのNokia(23.3%)、4位が中国のZTE(13.0%)、4位が韓国のSamsung Electronics(3.2%)、5位がNEC(1.4%)、6位が富士通(0.9%)となっている。

図1 通信基地局の売上高シェア 出典:IHS Markit(クリックで拡大)

 通信基地局ビジネスで米国企業は参入できておらず、日本企業の影も薄い。その一方、中国はHuaweiとZTEの合計で約4割のシェアを占めている。さらに、中国製の通信基地局は価格が安いために、出荷台数のシェアは4割よりも大きく、6〜7割を占めている可能性がある。

 世界には、本格的なビッグデータの時代が到来している。そのビッグデータは、必ず、通信基地局を経由してやりとりされる。そして今後は、これらの通信基地局が5G(第5世代移動通信)のハブになる。その結果、中国が通信技術のインフラで、世界を制すると言っても過言ではない。

 もし本当に、中国製の通信基地局にバックドアなどを仕掛けられたら、中国が世界の秘密情報を盗むことが可能になる。それに加えて、米国が恐れているもう一つの原因が、2017年6月28日に中国で成立した「国家情報法」にあると筆者は考えている。

中国の「国家情報法」とは

 2018年12月20日の日経新聞の第2面「真相 深層」によれば、「国家情報法」には、効率的な国家情報体制の整備を目的に掲げ、「いかなる組織及び個人も、国の情報活動に協力する義務を有する」(第7条)と明記されているという。

 同記事によれば、スパイ活動は、中国だけでなく米欧やロシアなど多くの国が水面下で実施しているが、民主主義諸国では一般国民が自国の情報機関に協力するか否かは基本的には個人の自由意思に委ねられている。

 ところが、中国の「国家情報法」は、第7条の文章通りに解釈すれば、約14億人の国民や企業にスパイへの協力を強制できることになる。そして、中国は、この法律を安全保障はもちろん、国家を挙げた自国の産業高度化にもつなげようとしていると記事は指摘している。

 例えば、米国のGoogle、Intel、Applied Materialsなどのハイテク企業には、多数の在米中国人技術者が勤務している。もし、中国の情報機関がスパイ行為を働くよう指示すれば、彼らは「国家情報法」により拒めないことになる。

 さらに、世界の通信基地局を支配しているHuaweiやZTEに対して、中国の情報機関がスパイ行為を指示すれば、どんな秘密情報もたちどころに盗み出すことが可能になるかもしれない。

 米国が「中国が知財を盗んでいる」と主張する背景には、Huaweiなどの中国企業が通信基地局を支配していることと「国家情報法」の存在があると考えられる。米国が焦るのも無理はない。

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