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» 2019年02月04日 10時30分 公開

nano tech 2019:高湿度の生活空間でも、ニオイガスなどを識別

産業技術総合研究所(産総研)は、「nano tech 2019」で、生活空間に存在するさまざまなニオイを識別できるセンサーアレイのデモ展示を行った。車室内や一般住宅などでの活用が容易だという。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

バルク応答型センサーと一般的な半導体センサーを組み合わせ

 産業技術総合研究所(産総研)は、「nano tech 2019」(2019年1月30日〜2月1日、東京ビッグサイト)で、生活空間に存在するさまざまなニオイを識別できるセンサーアレイのデモ展示を行った。この素子を用いると簡便で小型のニオイ識別センサーシステムを実現することが可能となり、車室内や一般住宅などでも容易に活用できるという。

 産総研は、常温や常圧、水中でのセラミック合成技術を開発し、プラスチックフィルム表面へのナノ構造コーティングなどを可能としてきた。これによって、粉末を結晶化させるための焼成工程を不要にした。コーティング膜の表面積は、従来の200倍になるという。この技術を用い、ヘルスケア向けガスセンサーを開発している。口臭や肺がんの早期発見に有用な低濃度揮発性有機化合物(VOC)の検知が可能となる。

 今回開発したセンサーアレイ素子は、これまで開発してきたバルク応答型センサーと一般的な半導体センサーを組み合わせている。バルク応答型センサーは原理的に湿度の影響を受けにくいという。このため、一般的な半導体センサーでは難しかった高湿度環境でも、呼気や室内空気のガス成分を測定でき、機械学習によってニオイの識別性能を飛躍的に高めることが可能になった。

 湿度の影響を受けない分析法としては、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)や濃縮装置を併用する方法がある。しかし、手軽に装置を持ち運ぶことができず、測定時間も長いため、車室内などに装置を持ち込み簡便にニオイを識別することは難しかった。

 産総研が開発したバルク応答型センサーは、一般的な半導体式センサーと同様、抵抗値からガス濃度を測定するが、検出可能なガスの種類は少ない。ところが、湿度の影響を受けにくいという特長がある。これに対し一般的な半導体式センサーは、高湿度環境では識別能力が低下するが、検出できるガスの種類は多い。そこで、特性の異なる複数のセンサーを組み合わせることで、ニオイの識別性能を高めた。

 これまで、特性などが異なる2種類のバルク応答型センサーと6種類の一般的な半導体式センサーを組み合わせたセンサーアレイを試作し、その効果を実証してきた。この結果、ヒト由来のガスとして報告されている4種類のガス種を全て識別できた。ところが、6種類の一般的な半導体式センサーのみのセンサーアレイでは、4種類のニオイガスのうち3種類が重なり、得られたデータだけではニオイを識別することができなかったという。

 ブースには、2種類のバルク応答型センサーと2種の一般的な半導体式センサーを組み合わせたセンサーアレイを搭載したポータブル測定器のデモ機を用意した。このデモ機にはセンサーアレイの他、会場内の空気を吸引/排出するためのポンプおよび、装置を駆動するための電池が内蔵されている。

バルク応答型センサーと一般的な半導体式センサーを組み合わせたセンサーアレイの外観

 開発した小型のセラミックスセンサーアレイ素子は、実験で識別した4種類のヒト由来ニオイガス以外でも、体臭などを含む不快臭やその濃度を識別できるという。測定結果はスマートフォンなどに送信し、ガスの種類などを表示させることができる。さらに、空調/換気システムとの連動も可能だという。

 今後は、実環境に近いデータを取得し機械学習と組み合わせることで、実空間での室内空気質測定技術を開発し、2022年ごろの実用化を目指す考えである。

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