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» 2019年02月15日 09時55分 公開

大山聡の業界スコープ(14):米中貿易摩擦は自暴自棄、長続きはしない (1/2)

昨今の米中貿易摩擦に関する展開を見ていると、半導体/エレクトロニクス業界への影響が無視できなくなってきた。この問題がどこまでエスカレートするのか、どんなことに留意すべきか。現状を整理しながら、米中貿易摩擦の落ち着きどころについて考えてみたい。

[大山聡(グロスバーグ),EE Times Japan]

米中貿易摩擦の落ち着きどころは?

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 筆者は政治の専門家ではないので、あまり政治色の強い記事を書くことは本意ではない。しかし昨今の米中貿易摩擦に関する展開を見ていると、半導体/エレクトロニクス業界への影響が無視できなくなり、この問題がどこまでエスカレートするのか、どんなことに留意すべきか、考えざるを得なくなってきたような気がする。ここでは、現状を整理しながら、米中貿易摩擦の落ち着きどころについて考えてみたいと思う。

 米中貿易摩擦は、2018年4月にトランプ政権が中国の知財侵害に対する制裁として、総額500億米ドルに相当する約1300品目に25%の関税を課する、という原案を発表したことから始まった。1300品目の内訳としては、産業機器の一部、テレビなどの家電製品、自動車、化学品や医薬品などが含まれており、コンピュータや携帯電話機、衣料関連は除外されていた。

米商務省データを基にGrossbergが作成

 上図は2017年の米国における中国からの輸入品の内訳を示したものだが、上位の3つを除外して、4番目以降の輸入品目を対象に関税措置を検討していることが分かる。コンピュータと携帯電話機を対象から外したのは、Apple、HP、Dell製品のほぼ100%がHon Hai Precision Industry(鴻海精密工業)などEMS企業の中国工場で量産されている、という現状に配慮した結果だろう。こんなものに関税をかけたところで、Appleなどが米国内生産に回帰しよう、などと考える可能性は極めて低い。衣料関連も同様で、トランプ大統領が時々かぶっている帽子も「Made in China」かもしれない。同大統領の長女が設立したアパレルブランドも、Washington Post紙によれば、ほぼ全ての製品がバングラデシュやインドネシア、中国で製造されているという。これらを米国内生産に切り替えよう、という発想はやはり現実的ではなさそうだ。

 これに対して中国は、米国からの輸入品に報復関税を課する方針を発表、128品目、豚肉やワイン、果物などの農産品が対象に含まれた。

米商務省データを基にGrossbergが作成

 食品/農産物は、米国から中国への輸出品の14%を占めている(上図より)。米国から中国への輸出金額1299億米ドル、これは輸入金額の5055億米ドルに比べて4分の1程度でしかないため、金額的なインパクトは米国側の関税措置ほど大きくはないが、トランプ政権を支持する農業従事者にとっては大きな打撃と言えそうである。

 その後、米国は2018年7月に2000億米ドルの追加関税を指示。対象は6000品目にも及び、その中には産業用ロボット、通信機器、電子部品なども含まれている。これに対して中国が報復措置を発表し、米国側がさらに関税額を引き上げる、という応酬が続いた結果、米国は中国から輸入する5055億米ドルの製品の半分程度に関税をかけ、中国は米国から輸入する1299億米ドルの製品の7割近くに関税をかける、という事態にまで発展した。

 この結果、両国間の輸出入には当然のようにマイナス影響が出始めた。顕著な例で言えば、中国から米国への産業用ロボットの出荷は約5割減を記録し、米国から中国への大豆出荷は約4割減少した。それだけではない。GDP世界1位の米国と2位の中国が引き起こした貿易摩擦は、2018年末から発生しているグローバルな株安現象の一因にもなっている。どこからどこまでが貿易摩擦による影響である、と断じることはできないが、「輸入を制限すれば国内生産が活性化する」などという発想は、世界経済にとって迷惑千万であることは間違いない。

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