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勝負は決まった? 魅力ある「お掃除ロボット」市場での半導体情勢製品分解で探るアジアの新トレンド(36)(2/3 ページ)

» 2019年03月01日 11時30分 公開

おおよそ20〜30個の機能半導体チップ

 図1図2では、お掃除ロボットに搭載される半導体チップとしてマイコンと通信チップだけを掲載したが、実際には、おおよそ20〜30個の機能半導体チップが搭載されている。モーターを駆動するためのブリッジドライバ、パワー半導体などは車輪やごみ吸引用のモーターなどに用いられる。さらに充電ステーションとの間の通信を行うための通信チップもWi-Fiチップとは別に搭載されている。その他は、メモリチップやレギュレーター、オペアンプなどで構成される。

 1台に20〜30個もの半導体を使用する……半導体メーカーにとっては“おいしい市場”である。しかも半導体のあらゆる要素を使ってくれるのが「お掃除ロボット」だ。センサーに、制御用マイコン、情報処理IC、通信チップ、パワー半導体、メモリ……。半導体のほぼ全てのセグメントを使っているわけだ(スマートフォンも同様に全セグメントの半導体が使われ、かつ高度化されている!!)

 図3は、iRobotが2018年10月に発売したお掃除ロボット「ルンバE5」である。

図3:iRobotが2018年10月に発売した「Roomba E5」と主要搭載チップ (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 こちらも内部は中国製とほぼ同じ構造だ。システム、モーター制御はST製マイコン。Wi-Fi通信チップは米Marvell Semiconductor製。いずれもArmのCortex-MシリーズのCPUコアが備わっている。

お掃除ロボットの主流内部構成

 図4は、多くのお掃除ロボットの内部構造を図面化したものだ。中央にシステムおよびモーター制御のマイコンがある。それを取り囲むように、Wi-Fiチップ、センサー群が入力として入ってくる。これらの入力情報を処理し、モータードライブチップに命令を送りモーターを動かす。図右上の緑の部分が高級モデルに付加されるセンサーである。レーザースキャンを持つモデル、CMOSイメージセンサー(カメラ)を持つモデル(LG Electronics製やDyson製)などがある。

図4:現時点のお掃除ロボットにおいて、主流になっている内部構成 (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 カメラモデルは見守り監視などの機能を備えることもできる。お掃除ロボットは、待機時は充電器に収まっているため電池切れの心配がない状態でWi-Fi通信が行えるので、監視カメラ機能を果たす場所としてはベストな選択の一つだろう。

 今後機械学習能力を持ったもの、より高度なカメラ機能を持つものなどが生まれてくる可能性が高い。

 筆者が代表を務めるテカナリエでは多くのお掃除ロボットの分解を行っている。2019年も早々にゴミ分離も自動的に行う「ルンバi7」が発売され、早速、発注して3月には分解、分析を行う予定だ。こうしたお掃除ロボットの入手経路は、中国から取り寄せるもの、米国から取り寄せるものなどさまざまだ。

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