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» 2019年04月10日 11時30分 公開

IHSアナリスト「未来展望」(15) 2019年の半導体業界を読む(3):半導体市場の成長をけん引する5G、端末向け部品では日本に追い風 (2/3)

[村尾麻悠子,EE Times Japan]

5G端末の部品では、日本企業に追い風も

EETJ 現時点で、スマートフォン向けの5Gモデムチップを開発しているのはIntelとQualcommのみでしょうか。

大庭氏 そこは悩ましいポイントでもある。現行のLTE端末に関しては、IntelとQualcommが主流だが、中国系スマートフォンではSpreadtrum(2018年にRDAと統合し、UNISOCという社名になっている)のモデムチップを採用している製品も多い。5G端末についても、モデムについて中国メーカーがどこまで開発できるかは、まだ読み切れないところがあるが、中国メーカーが開発を進めているのは確かだ。

 ただ、2018年末にMediaTekが5G対応モデムチップを発表し、Samsungも生産を始めている。5G端末には多くのAndroid系端末メーカーが対応を計画していて、チップ供給の裾野も広がりつつあるが、中華系スマートフォンメーカーへの供給については、未知の点が多い。

 大容量、高速通信の5Gをサポートできるよう、モデム、アプリケーションプロセッサ、メモリの性能は進化するだろう。他にも、5Gは高周波になってくるので、高周波パワーアンプやアンテナ、受動部品など、日本が強みを持つ、半導体以外のコンポーネントでも性能の向上が求められるようになる。スマートフォン市場は飽和に近い状態だが、5G向けの高性能な部品という市場に目を向ければ、伸びしろがある分野だと考えている。

EETJ 日本企業に追い風が吹くということでしょうか。

大庭氏 そのように考えてよいと思う。今は中国でもスマートフォンが売れない(飽和しているので)時代になっているが、中国は、米国とともに5G開発をけん引している国であり、5G端末という点では市場のポテンシャルは大きく、期待できるのではないか。

EETJ 5Gは、モバイルの他、例えば自動車やIoT(モノのインターネット)への応用も期待されていますが、スマートフォン以外のアプリケーションでは、どのような動きが出てくるとお考えですか。

大庭氏 現在、最も大きな動きの一つが米国のブロードバンドだ。集合住宅や、光ファイバーを引けない場所などで、5Gをラストワンマイルとして活用することが期待されている。

 IoTや自動車で5Gを利用するための国際標準規格は策定している段階だが、セルラーネットワークをIoTに利用するサービスは、既に空港などで始まっている。具体的には、カーゴなどの機器や設備にセンサーを取り付け、LTE、Wi-Fi、近距離無線通信を組み合わせてセンサーデータを取得し、機器の稼働状況を把握したり、モニタリングしたりする。このような用途で5Gを使うようになれば、より多くの機器を接続し、より高速に通信できるようになるだろう。

コストが課題

EETJ 5Gの要素技術で、まだ残っている課題は何でしょうか。

大庭氏 無線通信方式によるところもあるが、ミリ波だと上り通信の時に干渉が大きくて厳しいという声は聞く。特に、TDD方式では何とか送信できても、FDD方式だと上り通信でエラーが出てしまうケースが多いようだ。

 いわゆる要素技術とは異なるが、コスト面での課題も大きい。膨大な数のセルを設置する必要があるため莫大な費用がかかり、果たしてそれを回収できるのかという懸念もある。そこで、1台当たりのコストが低い中国製の機器を使って、テストしているところも、特に欧州では多い。一方で、米国に歩調を合わせて中国製を使わないと表明した国々もあるのは、報道されている通りだ。

 端末自体のコストも考慮しなくてはならない。既存のスマートフォンと同じチップ構成にすると、1台当たりのコストが200米ドルほど高くなると試算されている。販売価格が1000米ドルを超えるハイエンド機ならまだしも、数百米ドルで販売されている端末に200米ドルのコストを上乗せするわけにはいかないだろう。

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