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» 2019年04月12日 09時30分 公開

湯之上隆のナノフォーカス(11):ルネサスの工場停止は愚策中の愚策 ―― 生産停止でコストが浮くは“机上の空論” (1/4)

ルネサス エレクトロニクスは2019年4月以後に工場を停止する計画だという。2018年第4四半期までのルネサスの業績を見る限り、「中国や米国での需要減少」や「自動車や産業用ロボットの半導体需要の減少」では、前代未聞の工場停止を説明できない。もし、工場を止めた場合、再立ち上げにどのような労力が必要となるかを示し、いかなる事情があろうとも工場を止めるべきではない。

[湯之上隆(微細加工研究所),EE Times Japan]

3月29日の呉CEOの記者会見

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 ルネサス エレクトロニクスの呉文精社長兼CEOが2019年3月29日に、都内で記者会見し、4月以後に計画している主要工場の停止について説明した。

 3月30日の日経新聞によれば、「中国や米国での需要減少が顕在化した後に減産対応が遅れた」こと、および「自動車や産業用ロボットなど市場全体で需要が低下」しており「こうした製品に使う半導体の需要も落ち込んだ」ことを、工場停止の要因として挙げている。

 そして、前掲の日経新聞は、「停止を検討するのは国内外14カ所ある工場のうち13カ所。まず国内の主要6工場で4〜6月に平均で1カ月稼働を停止する想定だが、停止期間を短縮できる見込みもあるという。7月以降は未定だが工場によっては最大2カ月ほど停止すると見られる」と報道している。

 要するに、ルネサスの国内の前工程主要6工場は、4〜6月ごろ(恐らくGWを中心とする時期)に1カ月弱停止し、7月以降(例えば8月)にさらに最大2カ月程度停止する模様である。

 本稿では、少なくとも2018年第4四半期までのルネサスの業績を見る限り、「中国や米国での需要減少」および「自動車や産業用ロボットの半導体需要の減少」では、前代未聞の工場停止を説明できないことを論じる。その上で、もし、工場を止めた場合、再立ち上げにどのような労力が必要となるかを示し、いかなる事情があろうとも工場を止めるべきではない結論を導く。

ルネサスの地域別半導体売上高

図1:ルネサスの地域別半導体売上高の推移 (クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクスのIRデータを基に筆者作成

 ルネサスの地域別半導体売上高の推移を見てみよう(図1)。最も特徴的な挙動を示しているのが、日本での半導体売上高である。2011年に約6200億円あった売上高は直線的に減少し、2016年には3分の1の2100億円強にまで落ち込む。その後、やや回復し、2017年以降は3000億円強になった。

 次に、呉CEOが問題視していた米国と中国での半導体売上高を見てみよう。米国での売上高は、650億円強でほとんど一定である。また、2011年に1600億円を超えていた中国での売上高は、2016年に750億円強に落ち込むが、その後1500億円強にまで回復する。

 ここで、地域別半導体売上高から地域別売上高シェアを算出してみた(図2)。2011〜2013年まで約55%だった日本の売上高シェアは、2018年に40%に低下している。一方、米国のシェアは、2015年以降10%弱で安定している。また、2011年に約13%だった中国のシェアは、少しずつ増大し、2018年には20%を超えた。

図2:ルネサスの地域別半導体売上高比率の推移(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクスのIRデータを基に筆者作成

 以上から、通期の地域別売上高およびそのシェアの挙動からは、米国と中国の需要が減少した兆候は見えてこない。したがって、米国と中国の需要減が工場停止の要因であるとは言えないのではないか(もし、四半期ごとの業績、特に、2019年第1四半期の業績が分かれば、米中の需要減が起きている兆候が見えるのかもしれない)。

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