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東芝、車載向けLiDAR用計測アルゴリズムを開発測距解像度を2.2倍に向上

東芝デバイス&ストレージは、車載向けLiDAR(ライダー)の長距離測距における解像度を、従来に比べて2倍以上も改善できる「計測アルゴリズム」技術を開発した。

» 2019年04月26日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

同一解像度なら測距距離は22%増大

 東芝デバイス&ストレージは2019年4月、車載向けLiDAR(ライダー)の長距離測距における解像度を、従来に比べて2倍以上も改善できる「計測アルゴリズム」技術を開発したと発表した。

 車載用LiDARは、レーザーを照射しその反射光を検知することで、遠距離にある物体までの距離を測定できる。測距データを基に、車両の周辺環境を3D画像として確認することが可能となる。ただ、実使用環境で長距離を測定するには、太陽光などノイズの影響を低減することや、遠方にいる歩行者などを正しく検出するための高い解像度が求められる。

 東芝グループはこれまで、スマート平均化アルゴリズム(SAT)技術を開発し、200mまでの距離を高い精度で測定することに成功していた。しかし、自動運転システムなどに適用される車載用LiDARは、ノイズの影響をさらに改善し解像度を一段と高める必要があった。

 そこで同社は、SATの性能を向上させた「フレーム間スマート平均化アルゴリズム(I-SAT)」を新たに開発した。I-SATは、複数のフレーム(時間軸)の情報を基に平均化の処理を実行することで解像度を高めた。

 この時、前フレームの測距データは、測距結果のみを保持することでメモリの使用量を抑えた。しかも、前フレームの情報を用いるときは測距結果を枠として設定する。その枠内にある現フレームの情報も出力データ候補として追加する。これによって、前フレームと現フレームの情報が混同されることなく、出力データの候補数を増やすことができたという。誤検出の除去も、複数フレームの測距結果を用いて信頼度の判断を行う。

SAT技術とI-SAT技術の違い 出典:東芝デバイス&ストレージ

 同社は、I-SAT技術とSAT技術による解像度および、測距可能な距離について検証した。この結果、I-SAT技術を適用すると距離200mにおける解像度は2.2倍も改善され、空間分解能0.1°を実現した。同一解像度であれば、測距可能な距離は22%も増大することが分かった。なお、実装コストの増分は従来技術に比べ1%以下に抑えられるという。

I-SAT技術によって、解像度は2.2倍も改善(上図)、測距可能な距離は22%増大した(下図) 出典:東芝デバイス&ストレージ

 東芝デバイス&ストレージは今後、測距精度のさらなる向上や実装化に向けた技術の開発に取り組み、2020年までに実用化を目指す考えである。

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