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AIと5Gで覇権を争う米中、業界は二分されるのか深まる対立(1/2 ページ)

米国、中国間の貿易戦争は、特にAI(人工知能)と5G(第5世代移動通信)での技術優位性が全てである。最終的には、米国側を支持する米国主導のグループと、中国側を支持する中国主導のグループに世界が二分される可能性がある。

» 2019年05月15日 11時30分 公開
[Nitin DahadEE Times Japan]

 米国、中国間の貿易戦争は、特にAI(人工知能)と5G(第5世代移動通信)での技術優位性が全てである。最終的には、米国側を支持する米国主導のグループと、中国側を支持する中国主導のグループに世界が二分される可能性がある。

 これは、米国と中国に拠点を置くプライベートエクイティ企業のCanyon Bridgeの創業者で、パートナーでもあるPeter Kuo氏が、ドイツ・ミュンヘンで2019年4月15〜16日(現地時間)に開催された「GSA 2019 European Executive Forum」で述べた見解である。Kuo氏は、貿易問題を巡る2国間の争いに終止符を打てるような、それぞれの面目を保てる取り決めがあるかもしれないが、2国は政策ではなく技術を巡って冷戦に突入するように見えると述べた。

 同氏は「AIと5Gは、米国の中国に対する過敏性を浮き彫りにした」と指摘した。加えて、米中間の緊張が続く可能性があることの理由の一つとして、米国が貿易協定から何を得たいのかが真に明確になっていないことを挙げた。

 Kuo氏は、中国が自らの目標に集中し続けているのに対し、米国の目標は矛盾していると指摘した。例えば、米国は内国貿易と投資に対する障害を低くすることや、IP保護を強化すること、二国間貿易のバランスを取ること、サプライチェーンを米国に戻すことなどを目指しているとするが、最終的には、中国の急激な経済発展を阻止することを狙っているという。

 一方、中国は自らの成長に強く焦点を当てている。それは、技術の自給自足を推進することと、ローエンド製品の輸出からより高い価値を付加した製品やサービスに移行することを目指したプロジェクト「Made in China 2025」からも明らかだ。また、中国は、脆弱性とあらゆる国(例えば米国)への依存を減らすことを目指しているという。

米中は、対立しているにもかかわらず、二国の経済は深い相互関係にある 出典:GSA(クリックで拡大)

米国は中国の急成長を懸念?

 米国は、中国がAIや5Gの開発で急成長することを明らかに懸念している。在中国米国商工会議所は長い間、米国と中国をつなぎとめる強固な“いかり”だと見なされてきた。だが、同会議所は最近、中国は以前から開放を約束しているものの、中国に進出しているさまざまな業界の米国企業は、中国企業が米国で得ているのと同じ待遇をいまだ受けられていないと指摘した。

 ミュンヘンでは、Mentor, a Siemens Businessの名誉CEOであるWally Rhines氏は、世界半導体市場や新興のAI領域での中国の台頭の高まりを示す一連のデータを提示した。同氏は、新興の半導体ファブレス企業へのベンチャーキャピタルによる投資が、特に初期ラウンドで大幅に増えており、そのほとんどの資金が中国からのものだと述べた。中国政府が半導体への投資に多額の奨励金を出していることから、中国による世界各地のファブレス企業に対する初期ラウンド投資額は、米国による投資額の6倍に及ぶという。

中国は新興企業への投資を増やしている 出典:Mentor, a Siemens Business(クリックで拡大)

 中国で新規に設立される半導体の新興企業は、2015年は715社だったが、2016年と2017年は年間約1300社に急増した。Rhines氏は、「機械学習を含むAIは近年、半導体市場を大きくけん引しているが、中国のファブレス企業も急増している」と述べている。

 Rhines氏によると、「ほとんどの新興企業が、機械学習においては組み込みニューラルネットワークを活用している」という。パターン認識、とりわけ顔認識はAIの中でも主要なアプリケーションである。実際、顔認識技術を手掛ける中国のスタートアップSenseTimeとFace++は、2018年に最も潤沢な資金提供を受けたAI企業でもある。Rhines氏によると、「中国で顔認識技術を手掛ける企業は14社を超え、これらの企業の株式時価総額は10億ポンド(約1414億円)を上回る」という。

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