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» 2019年06月04日 14時30分 公開

日本でのシェア拡大も:InfineonのCypress買収は“弱点の克服”を狙う一手 (1/2)

Infineon Technologies(インフィニオン テクノロジー)とCypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)は2019年6月3日(ドイツ時間)、InfineonがCypressを約90億ユーロ(約1兆1000億円)で買収することで合意したと発表した。InfineonとCypressは、製品の重複が極めて少なく、自動車領域やIoT(モノのインターネット)におけるエッジ端末領域を中心に“補完関係”にあり、Infineonにとって、Cypressは相乗効果を発揮しやすい相手と言えるだろう。ただし、このところ、半導体メーカー間の大型M&A案件では、規制当局の承認を得られず破談となるケースが相次いでおり、買収が完了するかどうかは、今後の行方を見守る必要がありそうだ。

[竹本達哉,EE Times Japan]

 Infineon Technologies(インフィニオン テクノロジー)とCypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)は2019年6月3日(ドイツ時間)、InfineonがCypressを約90億ユーロ(約1兆1000億円)で買収することで合意したと発表した(既報:InfineonがCypress買収へ、約1.1兆円で)。

 InfineonとCypressは、製品の重複が極めて少なく、自動車領域やIoT(モノのインターネット)におけるエッジ端末領域を中心に“補完関係”にあり、Infineonにとって、Cypressは相乗効果を発揮しやすい相手と言えるだろう。ただし、このところ、半導体メーカー間の大型M&A案件では、規制当局の承認を得られず破談となるケースが相次いでおり、買収が完了するかどうかは、今後の行方を見守る必要がありそうだ。

パワー半導体に強みを持つInfineon

 Infineonは現在、「オートモーティブ(ATV)」「インダストリアルパワーコントロール(IPC)」「パワーマネジメント&マルチマーケット(PMM)」「デジタルセキュリティソリューションズ(DSS)」の4事業に注力。直近、2019会計年度第2四半期(2019年1〜3月期)売上高19億8300万ユーロにおける売り上げ構成は、ATV事業が約43%、IPC事業が約17%、DSS事業が約30%、DSS事業が約8%になっている。製品としては、ATV、IPC、PMMの3事業で展開するパワー半導体が主力。元々は、IGBTなど中高耐圧のパワー半導体が中心だったが、2015年にInternational Rectifierを約30億米ドルで買収し、中低耐圧品を拡充。幅広い製品群でパワー半導体市場で世界シェア首位を走る。

 パワー半導体以外では、ATV事業では、パワートレインや車体制御向けのマイコンや、レーダー用送受信ICなども展開。車載半導体市場におけるシェアは現状、首位のNXP Semiconductorsに次いで2位に位置する。

 さらに売り上げ構成比は10%に満たないものの、長年、電子パスポートなどに向けたセキュリティICを主力とするDSS事業への注力を続け、セキュリティIC市場でも世界トップクラスのシェアを持つ。

M&Aで事業領域を広げてきたCypress

Cypressの売上高推移と、用途別売り上げ構成比 (クリックで拡大) 出典:サイプレス セミコンダクタ

 一方のCypressは近年、買収を重ねて、事業領域を拡大してきた。創業以来、手掛け続けるSRAMや、回路構成を変更できる独自デバイス「PSoC(プログラマブル SoC)」の他、2015年のSpansionとの経営統合により、NOR型フラッシュメモリや、富士通半導体事業部門の流れをくむマイコン製品事業や電源IC事業をポートフォリオに追加。さらに、2016年にBroadcomから無線LANやBluetoothに対応する無線半導体事業を獲得している。

 こうした製品を展開するCypressの売上高は2018年度(2018年12月期)実績で約24億8000万米ドル。2018年度第4四半期における用途別売上高構成は、車載向けが36%、民生向けが25%、産業向けが20%、エンタープライズ向けが19%になっている。

車載では、マイコンのラインアップが拡充

 InfineonとCypressは、車載向けビジネスが主力という共通点がありながら、競合する製品は数少ないとみられる。互いに車載向けマイコンを展開するものの、その用途は異なる。Infineonはエンジン制御やパワートレイン制御向けに強みを持ち、Cypressはインスツルメントクラスタ向けを中心にしたボディ制御向けマイコンが主体だ。

車載市場における両社の製品構成。車載マイコンにおいては、使用用途が異なる (クリックで拡大) 出典:Infineon Technologies
買収に関する説明資料でも、買収に伴い日本の売上高比率が高まると強調された (クリックで拡大) 出典:Infineon Technologies

 車載マイコン市場では、Infineonは、包括的な製品ラインアップを持つルネサス エレクトロニクス、NXPの両社に大きくシェアで水を空けられており、Cypress買収によるラインアップ拡充は車載マイコンにおけるシェア向上にも結びつく。さらに、Cypress買収により、Infineonの車載半導体事業で比較的シェアが伸び悩んでいた日本市場でのシェア向上も期待できる。Cypressの車載半導体事業部門は、旧富士通半導体事業部門が母体になっており、日本市場に強みを持っているためだ。

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