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5Gを活用する測位、低遅延でサブメートル級の精度も各方面での活用に期待(3/5 ページ)

» 2019年06月10日 11時30分 公開

センチメートル級の測位も

 過去数年間にわたり、衛星ベースの測位は急速な発展を遂げてきた。衛星ナビゲーションの初期の頃は、GNSSレシーバーはその位置を決定するために軌道上を周回している単一の衛星、つまり米国のGPSかロシアのGLONASSシステムのいずれかに頼らなければならなかった。

 しかし現在では、欧州のガリレオや中国の北斗、さらにはこれら2つの測位システムに追加された複数の地域拡張システムを使用した運用システムが利用されている。

日本の準天頂衛星システム「みちびき」 出典:内閣府 宇宙開発戦略推進事務局

 今日、ユーブロックスの「F9」世代のレシーバーなど、地球軌道を周回する全てのGNSSコンステレーションから同時に信号を受信できるマルチコンステレーションGNSSレシーバーが一般的になりつつある。その結果、都市の“谷間”や実際の渓谷部のように、空の大部分が遮られている場所でも、レシーバーは多くの衛星を「見る」ことができるため、精度が向上し、位置決定までの時間が短縮される。

 当初、GNSSレシーバーは一つの周波数帯で送信された衛星信号を使用して測位を行っていた。測位に誤差が生じる最大の原因の一つは、衛星信号が電離層を通過するときに生じる衛星信号の減速である。この遅延は周波数の二乗の逆数に比例するため、追加の周波数帯を追加し、そこからの信号を使用することで電離層誤差を特定し、補正することができる。最新世代のデュアルバンドGNSSレシーバーでは、標準のコードベース測位技術を使用することで、オープンスカイ条件下での平均測位誤差が約2.5mから1m未満にまで低減されている。

 GNSS測位の質は長い間、商用GNSS補正サービスの恩恵を受けてきた。GNSS補正サービスプロバイダーは通常、正確に特定されている位置に存在する基地局網を使用して入力GNSS信号を監視し、調整された補正情報を有料でエンドユーザーに送信している。コードベース測位では、これらは差分補正と呼ばれている。

 高精度搬送波位相追跡RTK(Real Time Kinematic)方式を使用した場合、近傍の基準レシーバーから得られた補正によりセンチメートルレベルでの測位が可能だ。今日、実装されつつある新世代のGNSS補正サービスでは、代替的なアプローチとして、国あるいは特定の大陸全体などの全地理的領域にわたり、インターネットないし衛星を介してGNSSコードと搬送波位相補正データをブロードキャストする方式が採用されている。

 センチメートル級の精度を達成するためにマルチコンステレーション/マルチバンドレシーバーと新GNSS補正方式を組み合わせ、所有コストを大幅に削減するアプローチは、高精度測位を提供する新たなタイプの一般市場向け用途への道を切り開こうとしている。

 ただし、GNSSには2つの欠点がある。レシーバーは、理想的に言えば位置を特定するために周回軌道衛星の見通し線内に存在する必要があるのだ。屋内やトンネル内では、サービスの質が低下したり、最悪の場合には利用できなくなってしまったりする。

 また、最良の場合でも、GNSSレシーバーがコールドスタートから開始してその位置を明確に決定するのに数秒もの時間を要する。慣性センサーを搭載した、主に自動車向けとして開発された推測航法ソリューションは、GNSS信号の到達範囲を超え、高精度測位の範囲を大幅に拡大する。アシストGNSS(A-GNSS)は、GNSS信号そのものを使用する方法ではなく、GNSSの軌道とクロックデータを取得する、より高速な方法を提供することにより、初期位置算出時間を短縮する。

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