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日本未発売スマホに搭載されたチップ、「HUAWEI」の刻印から分かること製品分解で探るアジアの新トレンド(39)(2/3 ページ)

» 2019年06月12日 11時30分 公開

最新チップが採用されている「Apple Watch Series 4」

 図1は、2018年9月に発売されたAppleの「Apple Watch Series 4」の分解結果を一部だけ掲載したものである。本体、センサー部、ディスプレイ部の大きく3つのパーツから構成される(さらに電池とTaptic Engineのモーターがある)。各々には半導体チップが組み込まれている。図1の右側の状態までならば、一部難しい場所もあるが、工具さえあれば誰でも分解できる。

図1:「Apple Watch Series 4」のSIP(Silicon In Package)モールドを取り外したところ (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 Apple Watch Series 4は、センサーやディスプレイの裏(ただし角を削った形状が採用される)に、パッケージに封じられたチップや基板に直接実装されたチップが並んでいる。メインのコンピュータ処理部や通信処理部は、「S4」と呼ばれるSIP(Silicon In Package)の中に収められている。S4は、ちゃんとした手順で分解(薬品と装置を使う)しないと中身を見ることはできない。弊社では、S4の中身を図1の左のように取り出して観察解析を行う。

 ちなみに本連載では若干ボカシを入れたS4内部の写真を掲載しているが、弊社のレポートでは、高倍率の顕微鏡で撮影した、細部まで鮮明な写真を掲載している。

 S4のパッケージを開封した後は、S4内に配置されているチップをさらに一つ一つ取り外し、それらシリコンチップの素性を明らかにしていく。

 この工程では、プロセッサや通信チップなどのキーデバイスは、配線層も取り除きチップの機能分析まで行う。実に骨の折れる作業だ。弊社では現在社員だけでなく、学生から主婦まで多くのアルバイトの方にも手伝ってもらっており、日夜手分けして、チップの素性を明らかにしている。

 図2はApple Watch Series 4に搭載されているチップを開封し、観察した一部である。チップは、パッケージから開封、もしくはフリップ実装の場合は取り外し、顕微鏡でチップ全体を拡大して細部まで必ず観察する。

図2:Apple Watch Series 4には、2017年のチップが多数採用されている (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 冒頭で、各メーカーは自社内に解析部門を持っていると書いたが、一般的にメーカーは自身の事業やポートフォリオに関係あるモノしか観察しないことが多く、弊社のように全てのチップを観察することはないようだ。弊社は水平分業なので、全てのチップの観察に重きを置いている!!

 チップは数ミリメートル×数ミリメートルと小さいので、肉眼では中身を見ることはできない。低倍率の顕微鏡で全体を観察した後、高倍率の顕微鏡でチップ内部をくまなく観察する。大抵のチップには文字や記号など、機能には関係ない情報が搭載されている。この文字は通常、設計時に、配線層の空き地に配線層素材で設計データとして付加され、製造工程で配線の一部として作り込まれる。設計完了時の年号を入れるケースが多い。

 図2にはメーカー名や年号などの情報を掲載した。これは極めて重要な情報だ。半導体チップは通常、開発に1年〜数年の年月がかかる。つまり、今日新発売になったチップも、実際に設計、開発されたのは1年から数年前ということになる。

 設計完了後に試作工程で動作確認し(不具合があればもう一度設計からやり直す場合もある)、量産、テスト、販売へと進む。図2に示したように、2017年の年号が入ったチップだけを並べてみたところ、2018年に発売されたApple Watch Series 4には、同年号が刻印されたチップが多数、使われていることが明らかになった。

 2017年に設計が完了し、その後量産化されたチップということだ。つまり、わずか1年で設計から量産まで実現した最新のチップが、Apple Watch Series 4には多数使われているというわけだ。

 このペースで行けば、2019年に“Apple Watch Series 5”(仮称)が出たとしたら、2018年チップが多数使われるのではなかろうか。

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