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» 2019年06月25日 11時30分 公開

レベル5の実用化は2030年以降?:自動運転車の“誇大広告”は、やめよう (1/3)

今こそ、自動運転車について率直な議論を行うべき時ではないだろうか。最近の予測では、どのメーカーも2025年まで、自動運転車への投資に対する見返りを得られそうにないとされている。また、完全な自動運転車の実現は、早くても2030年以降になる見込みだという。

[Junko Yoshida,EE Times]

 今こそ、自動運転車について率直な議論を行うべき時ではないだろうか。最近の予測では、どのメーカーも2025年まで、自動運転車への投資に対する見返りを得られそうにないとされている。また、完全な自動運転車の実現は、早くても2030年以降になる見込みだという。これらの予測は、いずれも楽観的だとされている。

 しかもこれは、自動車業界のメーカーが発表した予測だ。NXP Semiconductors(以下、NXP)が2019年6月に開催したイベントで行われたパネルディスカッションでは、Uber車の死亡事故や、Tesla車の事故が複数発生した以降の自動運転技術の現状について、驚くほど率直な見解が提示される結果となった。

 「自動運転車――自動車メーカーはどのような見返りを得られるのか」と題するパネルディスカッションには、技術サプライヤーの代表者2人と、電気自動車(EV)メーカーの経営幹部2人が参加した。議論の内容は、「安全性 vs. コスト」「自動運転車に不可欠とされる安全性レベル」「自動運転車が一般市民から信頼性を得られるのはいつなのか」など、多岐にわたった。

 パネリストたちの評価は、いつになく非常に現実的だった。しかし、技術メーカーや自動車メーカーが、これまで自動運転技術開発に注いできた数十億米ドル規模の投資をどのように回収する計画を立てているのかという課題については、曖昧なままだ。メーカー各社はこの先、本当に見返りを得られるのだろうか。

 今回のパネルディスカッションの重要なポイントを、まとめてみたい。

高性能自動運転車が必要とされる理由

 われわれはこれまで、自動運転車は路上の安全性を高められるはずだと言い聞かされてきた。自動運転車を開発する意義は、表向きは全て安全性の実現のためとされている。

 WHO(世界保健機関)によると、交通事故による死亡者数は、1年間当たり約135万人に上るという。特に5〜29歳では、交通事故が死亡原因の第1位となっている。

画像:WHO

 自動車業界および技術業界はいずれも、交通事故死亡者数の削減を第一目標に掲げることで一致している。

 さらに、信頼できない人間のドライバーを排除することにより、「自動運転車は、路上の安全性を確保できるだけでなく、子供や身体障がい者、高齢者などの、運転できない人々の移動性を高めることも可能だ。ロボットタクシーを隊列走行させることで、タクシーでの移動によるコストを削減できる他、トラックを隊列走行させれば大気汚染を減らすことも可能だ」と主張している。

 つまり、自動運転車業界は、政府や一般市民からの信頼性と支援を獲得することを目指して、適切な選択をしているのだ。安全性に反論するのは、非常に難しい。

 しかし、今はもう2019年である。業界は何年もの間、膨大な費用を投じて自動運転車の開発に取り組んできた。資本主義は突如として、利益よりも人間の安全性を優先させるようになったのだろうか。

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