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ニューラルネットだって混乱する!その対策は?自動運転車向けの安全性評価(1/2 ページ)

安全な自律性を実現すること」は、AIベースの自動運転車の開発者にとって、解決することが最も難しい問題の1つとして挙げられる。米国ペンシルベニア州ピッツバーグに拠点を置く新興企業Edge Case Researchは、認識スタック のエッジケース(境目ぎりぎりで起こる特殊なケース)を識別する安全性評価プラットフォーム「Hologram」を開発している。

» 2019年06月28日 11時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

自動運転車は幼児とプラダのバッグの違いが分かるか

 「安全な自律性を実現すること」は、AI(人工知能)ベースの自動運転車の開発者にとって、解決することが最も難しい問題の1つとして挙げられる。

 例えば、自分が運転する自動運転車が、道路を渡る母親と幼い子供に衝突することなく走行したとしても、「路上で最も安全な自動車に乗り、ドライブを楽しむことができた」と胸を張るべきではない。それは、ニューラルネットワークが具体的にどのように認識したのかを、自分では理解できていないということを意味しているにすぎないのだ。

 母親と幼児が無事だったのは、全くの偶然かもしれない。自分の運転する自動運転車は母親を認識できていたとしても、ニューラルネットワークは、その母親の腕につかまって飛び跳ねている小さな物体が何なのか、混乱していた可能性もある。また、センサーはその幼児のことを、プラダのバッグだと考えたかもしれない。

 ここで、「自動運転車が幼児とハンドバッグとの違いを確実に学習できるように、ニューラルネットワークのアルゴリズム内の不具合を効率的に特定して修正できるツールはあるのだろうか」という疑問が湧いてくる。

AuroraのChris Urmson氏とAnsysが投資する「Hologram」

 米国ペンシルベニア州ピッツバーグに拠点を置くEdge Case Researchは、カーネギーメロン大学(CMU:Carnegie Mellon University)から集まった自動運転/安全関連ソフトウェアの専門家によって設立されたベンチャー企業だ。同社は、認識スタックのエッジケース(境目ぎりぎりで起こる特殊なケース)を識別する安全性評価プラットフォーム「Hologram」を開発している。

 Edge Case Researchは、安全性と自律性に関する難題に正面から取り組んでいる、数少ない企業の1つだ。同社は2019年6月、大きな後押しを受けることになった。自動運転車開発を手掛けるベンチャー企業Auroraの共同創設者でありCEOのChris Urmson氏と、ロケットや飛行機、自動車などに向けたエンジニアリングシミュレーションの分野における世界的リーダー企業Ansysの両者が主導する投資ラウンドから、700万米ドルの資金を調達することに成功したのだ。

 今回の投資ラウンドに参加した企業としては、Lockheed Martin Venturesや、Liberty Mutual Strategic Ventures、Trucks VC、Blue Tree Allied Angelsなどが名を連ねる。

 Urmson氏と、Ansysの副社長Matt Zach氏の両氏は、Edge Case Researchの取締役会に参加する予定だという。Urmson氏は以前に、Alphabetと共同で自動運転車プロジェクトに取り組んだ経験があるなど、自動運転分野のバックグラウンドを持つ。またAnsysは、エンジニアリングシミュレーションソフトウェア分野における優れた技術で広く知られている。

 Edge Case ResearchのCEO、Michael Wagner氏は、同社の取締役会が、自動運転と安全性の両分野で第一人者を得たことに触れ、「当社は、投資家たちとの間で、自動運転システムの安全性が最重要課題であるという見解で完全に合意している。われわれは、当社のチームと考え方がよく似ている投資家たちを集めてきた」と述べている。

 Edge Case Researchは、同社にとって初となる投資ラウンドで獲得した700万米ドルの資金を、Hologramの開発を拡大していくために投じる予定だという。同社のHologramソフトウェアは、既にテストが行われているが、Wagner氏は、「追加の試験的プログラムを展開したうえで、規模を拡大し、2019年末までに販売を開始することを計画している」と説明した。

「Hologram」のデスクトップ画像。自動運転車が歩行者、車、その他の重要な道路利用者を検出できない場合のシナリオを自動的に見つけ出している。この図は、Hologramがユーザーに表示する可能性があるシナリオの例を示している。画面中央付近に表示されている赤い境界ボックスは、検出されなかったオブジェクトの場所を示している。継続的なリスク分析プラットフォームは、事故が発生する前に、開発者が安全上の問題について学習するのに役立てることができる(クリックで拡大)出典:Edge Case Research
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