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» 2019年07月10日 13時30分 公開

半導体ベンチャーTechpoint:送信IC+ISPにCISまで組み合わせて付加価値を出す (1/3)

監視カメラ/車載カメラ向けの長距離伝送用チップを手掛けるTechpoint。レシーバーICに強みを持つ同社だが、差異化しにくいトランスミッターICでは、ISP(Image Signal Processor)や、現在開発中のCMOSイメージセンサー(CIS)まで組み合わせて付加価値を高めようとしている。

[村尾麻悠子,EE Times Japan]

日本人シリアルアントレプレナーが立ち上げた半導体ベンチャー

 米シリコンバレーに本拠地を構えるTechpoint(テックポイント)は、監視カメラおよび車載カメラの映像を、同軸ケーブルを使ってフルハイビジョンで長距離伝送するためのチップを開発しているファブレス半導体メーカーだ。従業員は約70人で、本社のある米カリフォルニア州サンノゼの他、同州サンディエゴ、東京、台北、ソウル、深センの計6カ所に拠点を持ち、深セン以外の5拠点でR&Dを行っている。

Techpointの共同設立者でプレジデント兼CEOの小里文宏氏 画像:Techpoint

 同社の共同設立者でプレジデント兼CEOを務める小里文宏氏は、台湾の生まれで、大学以降は米国に在住しており、英語も中国語も堪能。2012年4月にTechpointを設立する前も、1995年にCD-ROM用コントローラーICを手掛けるSigmax Technologies、1997年にNTSC方式に対応するデコーダーICを開発するTechwell*)を共同設立している、日本人ではなかなか珍しいシリアルアントレプレナー(連続起業家)でもある。しかも、TechwellはNASDAQに、Techpointは東証マザーズにそれぞれ上場している。その小里氏が、「半導体ベンチャーを立ち上げたい」という長年の思いを実現し、満を持して設立したのがTechpointだった。

*)Techwellは2006年にNASDAQ市場に上場し、その後2010年にIntersil(ルネサス エレクトロニクスが2017年2月に買収)によって買収された。

急成長するアナログHDカメラ向けの製品

 同社が手掛けるチップは、アナログHDカメラシステム向けだ。アナログHDカメラシステムは、従来のアナログカメラシステムと同様の同軸ケーブルを使いながらも、HDや4Kの映像を流すことができる。HDの映像を伝送できるがカメラ1台当たりのコストが高いネットワークカメラの課題を解決するソリューションとして、ここ数年で急速に普及が進んでいる。

 Techpointは、このアナログHDカメラ用のトランスミッター(Tx)と、DVR(デジタルビデオレコーダー)用のレシーバー(Rx)をメインに、カメラ用のISP(Image Signal Processor)や液晶ディスプレイコントローラーも提供している。Tx/Rx間の伝送方式には、Techpointの独自規格「HD-TVI」を用いる。なお、チップの製造は前工程はTSMC、後工程はASE(Advanced Semiconductor Engineering)で行っている。

Techpointが手掛けるメインのチップ(TxとRx) 出典:Techpoint

 テックポイントジャパンで社長兼コーポレートマーケティングヴァイスプレジデントを務める蓬田宏樹氏によれば、近年は自動車分野でのニーズが高いという。「カーナビゲーションシステムの大画面化に伴い、HDでくっきりとした映像を見たいというニーズが増えて、車載カメラネットワークはHD化が進んできた」と同氏は説明する。

 車載カメラネットワークの伝送方式としては、LVDS方式が以前から主流だが、デジタルなので本質的にノイズに弱く、ケーブルの曲げによる損失も発生する。STPケーブルをはわせる必要があるので1m当たりのコストも高くつく。そこを、より低コストにできるのがアナログHDだと蓬田氏は述べる。「自動車メーカーからの相談で多いのが、『HD映像を流すだけなのでコストをもっと削減したい』ということだ。アナログHDであれば、ケーブルを自在に曲げられるし、コストもLVDSの約3分の1で済む」(蓬田氏)

 こうした背景から、Techpointは車載カメラ向けTx/Rxの量産を2016年から始め、既に大手自動車メーカーに採用されているという。現在もティア1メーカーや自動車メーカーに提案活動を積極的に行っているところだ。

 蓬田氏は「特に、中国、台湾、韓国では後方にもドライブレコーダーを取り付けたクルマが増えており、そこでのデザインインは既に約100社に上る。当社のTx/Rxの量産規模がじわじわと増えてきている」と述べ、同分野での手応えを語る。実際、車載カメラ向けの売上高は着実に伸びていて、売上高全体に占める割合は、現在は2割だが、2019年度(2019年12月期)は3割を超えると予想している。ドライブレコーダーに加え、電子ミラーへの用途拡大も進めているという。

 2019年7月10日には、中国の車載機器メーカーであるShenZhen Percherry Technologyが、自動車向け全方位モニターの新製品に、Techpointの4チャンネルRx「TP2824」を採用したと発表した。TP2824は独自規格のHD-TVIを採用し、1080p/720p/960Hなどの表示が可能である。

「TP2824」(画像中央のチップ) (クリックで拡大)
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