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Arm、ライセンス供与なしでIPを使えるモデルを発表RISC-Vに対する対抗策?

Armが、新しいプログラム「Arm Flexible Access」を発表した。これによりSoC(System on Chip)開発メーカーは、Armの幅広い種類のIP(Intellectual Property)を、ライセンス供与なしで使用することができるため、実験や評価を行ったり、さまざまなプロジェクトに着手したりすることが可能になる。

» 2019年07月22日 10時30分 公開
[Nitin DahadEE Times]

 Armが、新しいプログラム「Arm Flexible Access」を発表した。これによりSoC(System on Chip)開発メーカーは、Armの幅広い種類のIP(Intellectual Property)を、わずかな費用を払えば、ライセンス供与なしで使用することができるため、実験や評価を行うなど、さまざまなプロジェクトに着手できる。

 Arm Flexible Accessでは、メーカー各社は、製造(量産)を行う場合にのみライセンス料を支払えばよい。ただし、出荷する製品の分のロイヤリティーは発生する。Armは、このArm Flexible Accessの1年間当たりの料金を、テープアウトの回数が年1回のみの場合は7万5000米ドル、無制限の場合は20万米ドルに設定しているという。

 このArm Flexible Accessは、実にうまく構成された防御的な戦略だといえる。

 小規模な企業はこれまで、Armの代替となる新しいオープンソースのRISC-Vの開発に取り組んできた。初期費用を抑えられるという点が後押しとなっていた。通常、パートナー企業をはじめメーカー各社は、Armから個々のコンポーネントのライセンス供与を受け、ライセンス料を前払いしてから、技術を利用できるようになる。Armは、今回の新しいプログラムによって、最初にIPライセンスを供与しなければならないという義務を取り除くことにより、新興企業や新しい顧客企業だけでなく、既存のパートナー企業にも、半導体設計のチャンスを拡大できるようになると期待しているという。

 開発メーカーは、市場のニーズに素早く対応できるよう、迅速なアクセスと優れた柔軟性を求めている。ライセンス契約については以前から、契約関連の交渉に時間がかかり過ぎるとの不満の声が上がっており、ライセンス供与のプロセスそのものが障壁となっていた。このため、より素早くアクセスして実験が行えるよう、オープンソースのプロセッサを検討する設計メーカーもある。

 Armは以前から、「DesignStart」プログラムによって、「Cortex-M0」「Cortex-M1」「Cortex-M3」コアへの自由なアクセスを提供してきた。今回の新しいArm Flexible Accessは、このDesignStartをさらに拡充することになる。

ArmのDipti Vachani氏

 Armのシニアバイスプレジデントであり、オートモーティブ/IoT事業部門担当ゼネラルマネジャーを兼任するDipti Vachani氏は、今回の発表と同時に掲載したブログ記事の中で、「当社のIPライセンス事業における今回の改革は、500社を超える当社のライセンスパートナーの声に耳を傾けたことで成し得た、重要かつ直接的な成果だといえる。当社の経験から、長年取引のある顧客も新規の顧客も、簡単に実験を行うことができれば、平等に大きな成果を得られるということが分かっている。それを実現するのが、Arm Flexible Accessだ」と述べている。

 Arm Flexible Accessは、通常のArmライセンスを補完するプログラムだ。Armの全ての製品ポートフォリオや最先端IPへのアクセスを必要とするパートナー企業は、引き続き従来通りのライセンスを選択することも可能だ。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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