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» 2019年08月01日 13時30分 公開

結晶粒径を光波長の10分の1に:非立方晶系セラミックスでレーザー発振に初成功

北見工業大学、物質・材料研究機構(NIMS)、東京医科歯科大学の共同研究チームは、非立方晶系材料を用いた透光性セラミックスで、レーザー発振に成功した。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

粉体工学、粉末冶金学、レーザー工学の専門家が協力

 北見工業大学の古瀬裕章准教授と物質・材料研究機構(NIMS)の金炳男グループリーダーおよび、東京医科歯科大学の堀内尚紘助教らによる共同研究チームは2019年7月、非立方晶系材料を用いた透光性セラミックスで、レーザー発振に成功したと発表した。

 透光性セラミックスは、レーザー材料以外でも、蛍光体やシンチレーターなど、さまざまな分野での応用が期待されている。ところがこの母材は、これまで立方晶系材料に限られ、非立方晶系材料は単結晶のみが用いられてきた。多結晶だと複屈折により粒界散乱(Mie散乱)の影響を受けて、レーザー品質の光学特性が得られないためだという。

 結晶粒の大きさをできる限り小さくすることができれば、粒界での散乱を抑えられることが分かっている。多くの研究者が、サファイア(Al2O3)やアパタイトといった非立方晶系材料を用いて、散乱源を取り除く研究を行っているが、まだレーザー発振まで至っていないという。

非立方晶系セラミックス内の粒界散乱の概念図 出典:NIMS他

 そこで研究チームは、「粉体工学」や「粉末冶金学」「レーザー光学」の各専門家が協力。材料にフッ化アパタイトを選び、課題解決に取り組んだ。まず、透光性セラミックスを得るのに適した初期粉体の液相合成を行い、東京医科歯科大学で、粒子径が50nmの球状粒子を合成した。レーザー波長の約10分の1と極めて小さい結晶粒径にすることで、粒界散乱を低減したという。

Nd添加フッ化アパタイト初期微粉体の微細組織写真 出典:NIMS他

 次に、この粉体をNIMSで焼結をし緻密透明化した。今回は比較的低温でも緻密化が容易な「放電プラズマ焼結法」を用いた。焼結挙動を高度に制御することで、平均粒径がわずか140nmの微細組織を実現。散乱源が極めて少ないセラミックスの作製に成功した。

Nd添加フッ化アパタイト焼結体の微細組織写真 出典:NIMS他
Nd添加フッ化アパタイトの直線透過スペクトル(上図)と散乱スペクトル(下図) 出典:NIMS他

 北見工業大学は、作製した非立方晶系セラミックスを用いてレーザー発振に成功し、レーザー発振出力やスペクトルの評価を行った。吸収パワーに対するレーザー出力効率は約6.5%となった。

左はNd添加フッ化アパタイトのレーザー入出力特性、右はレーザー発振スペクトル 出典:NIMS他

 今回の研究成果により、非立方晶系セラミックスによるレーザー発振を実証し、新たな材料開発の可能性を示した。特に、長波長領域では、粒界散乱がさらに小さくなるため、中赤外レーザー材料としての展開が期待できるとみている。今回用いたフッ化アパタイトについても、粉体合成や焼結条件などの改善に取り組み、単結晶並みのレーザー品質を目指す計画である。

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