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» 2019年08月20日 10時00分 公開

トレックス・セミコンダクター 執行役員 事業本部本部長代理 清水映氏:車載、産業機器に向け小型・低消費電力電源ICの開発を加速するトレックス

トレックス・セミコンダクターは、小型・低消費電力を特長にする電源/アナログIC製品の開発体制を強化。成長領域と位置付ける車載、産業機器市場に向けた新製品を加速させている。同社事業本部本部長代理を務める清水映氏に、製品/技術開発戦略について聞いた。

[PR/EE Times Japan]
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車載/産業機器の市場ニーズと強みが合致

――2019年3月期のトレックス・セミコンダクター単独売上高(約101億円)を見ると、車載、産業機器向け売上高比率が前年からさらに伸び、54.1%に達しました。

清水映氏 中長期的に、車載、産業機器向け事業を強化してきた成果が着実に表れてきていると評価している。今後も継続的に、車載、産業機器向け事業の強化を進める。同時に、トレックスの強みである“小型・低消費電力”を生かすことのできる医療機器やウェアラブル機器およびIoT機器分野の事業強化も進めていく方針だ。

――車載、産業機器市場で事業規模が拡大している理由はどのように分析されていますか。

清水氏 当社は、モバイル機器などで実績ある小型・低消費電力電源IC製品を車載や産業機器市場のニーズに合致するよう品質、信頼性を高めてきた。一方で、車載、産業機器市場では以前にも増して、より小さく、低ノイズで、低発熱の電源ICを求めるようになってきた。こうした車載、産業機器の市場ニーズの変化と、当社の車載・産業機器市場向け製品強化が合致したことで、事業規模を広げることができていると考えている。

――車載、産業機器に向けた新製品投入が相次いでいます。

清水氏 車載向け製品であれば、インフォテインメント機器からボディ制御ECU、カメラなどADAS(先進運転支援システム)、さらにはモーターやインバーターなど電気自動車の駆動部まで、クルマのあらゆる部分に採用されるまでに製品ラインアップは広がってきている。ただ、まだまだ十分というわけではなく、あらゆるニーズに応えられるようバリエーションの拡充を図る必要がある。また、より高い耐圧、大きな電流に対応する製品投入も欠かせず、一層の製品開発を加速させる。

トレックスが車載市場でターゲットにする領域。高耐圧、大電流対応製品を投入し、自動運転システムや電気自動車の駆動部でも採用実績を伸ばしていく

――新製品開発はどのように加速させるのですか?

清水氏 新製品開発を早めるために、2019年4月に開発体制を再編した。車載向け製品と、コイル一体型DC/DCコンバータ“micro DC/DC”という注力製品それぞれの開発に特化した部門を新設し、注力製品に対し、開発リソースを重点的に配置した。

 これまでは車載向け製品であれば、モバイル機器などに向けて開発したDC/DCコンバータなどの電源ICを、車載グレードにグレードアップさせるという流れでの開発が基本だったが、今回新設した車載向け製品に特化した部門では、当初から車載での利用を前提に電源ICチップを開発していく。車載市場に適した電源ICを、効率良く、迅速に開発できるようになるだろう。

 “micro DC/DC”特化部門についても同様に、コイルと一体化することを前提にしてチップ開発を行い、より“micro DC/DC”の利点を引き出した高付加価値製品を数多く早期に開発する狙いがある。

 また、注力製品に開発リソースをシフトさせると同時に、外部の設計開発リソースを有効活用するための部門も設けた。外部リソースを積極活用し、すでに構築された回路技術をベースにした製品バリエーションの拡充などについても加速させる。

コイル一体型電源IC“micro DC/DC”

――専門の開発部門を設けた“micro DC/DC”は、販売が好調のようですね。

清水氏 “micro DC/DC”の2019年3月期売り上げ実績は、前年比31%伸びた。さらに今期、2020年3月期は51%増、3年前に比べ2.4倍の売り上げ規模に達する見込みであり、トレックスの主力製品に育った。

売り上げ拡大が続く“micro DC/DC”の概要

 コイルなど、周辺部品を搭載した電源モジュールが数多く登場している中で、“micro DC/DC”は、さまざまな構造、パッケージのコイル一体型電源ICがそろっており、単に電源回路のサイズを小さくできるだけでなく、ノイズや発熱を抑えられるという特長があり、幅広い市場の支持を得ている。

 1つの機器で必要になる電源の数は増えており、1つの電源に費やす設計時間を短縮したいというニーズも強まっている。面倒なコイルのマッチングなどが不要になる電源モジュールの需要は一層、高まる見通しであり、“micro DC/DC”の売り上げ拡大はしばらく続くだろう。

――“micro DC/DC”の開発方針をお聞かせください。

清水氏 このほど、電源ICパッケージ上にコイルを実装するというクールポストタイプと称する新構造の“micro DC/DC”を投入した。この構造は、より大きなサイズのコイルを一体化できるという特長がある。産業機器用途などに向けて開発している60V耐圧チップと巻き線型コイルを一体化するなど、“micro DC/DC”でも高耐圧、大電流対応を進めていく。

クールポストタイプ“micro DC/DC”の概要

 また、「XDL」を冠する型番の車載向け“micro DC/DC”も強化する。XDLシリーズは、独自のウェッタブル・フランク構造パッケージを採用し、リードレスパッケージながら車載市場で要求が強い自動外観装置でのハンダ接合部検査に対応した。車載市場では、“micro DC/DC”の低ノイズ性能が特に評価されており、XDLシリーズでさらに攻勢を強めたい。

車載向け“micro DC/DC”「XDL601/XDL602」が採用するウェッタブル・フランク構造のイメージ

“ナノクラス”の待機電流を実現

――“micro DC/DC”以外での期待製品を教えてください。

清水氏 車載向け製品では、降圧同期整流DC/DCコンバータ「XD9267/XD9268」が好調だ。この製品は、小型、低ノイズという特長とともに、軽負荷時を含めて効率が高い特長があり、レギュレータを置き換え可能なDC/DCコンバータに仕上がっている。ノイズや軽負荷時の効率がネックで、DC/DCコンバータの採用を諦めていたケースに最適な製品であり、サンプル提供開始から間もないが既に、日本や欧州の車載機器メーカーで採用が決定しており、さらに採用数が伸びる見込みだ。

左=降圧同期整流DC/DCコンバータ「XD9267/XD9268」 / 右=プッシュボタンコントローラー「XC6192シリーズ」

 また、プッシュボタンコントローラーシリーズ「XC6192」も、幅広い用途で好調だ。この製品は、電源スイッチ(プッシュボタン)が押されたことを検知し、マイコンなどを起動させることができるICで、0.01μA以下という“ナノクラス”の待機電流を実現している。待機時の電流がほとんど消費されないために、バッテリー機器を長期間保存しても電池残量の減少を最小限に食い止めることができるわけだ。小型バッテリーを搭載するワイヤレスイヤホンやスマートウォッチ、IoT機器などの用途で、電源オフ時のバッテリー消費を大幅にカットできるICとして、採用が拡大している。他にも、「XC6192」は、さまざまなプッシュボタン検知モードを備えており、誤操作による電源オン/オフを防ぐためのICとしての利用といった、意外な採用事例も増えている。「XC6192」は、1セルリチウムイオン電池搭載品に向けた2.5V動作製品だったが、ボタン電池、乾電池搭載品に対応する1.8V動作製品として「XC6193/XC6194」を新規リリースした。

――待機電流や自己消費電流を数十ナノアンペアレベルに抑えるためには、どのような技術を適用しているのですか。

清水氏 トレックスは、工場を持たない“ファブレス”の半導体メーカーであり、特定の製造プロセス技術に頼らず、回路設計技術によって実現している。15年ほど前は、自己消費電流が数10〜数100マイクロアンペア程度あったことを思うと、応答速度など、製品性能を犠牲にすることなく、継続した低消費電力化を実現できていることは感慨深い。

 昨年(2018年)、リリースした超低消費高精度電圧検出器「XC6135」では44ナノアンペア、「XC6136」では88ナノアンペアという世界最小級の消費電流を実現しており、IoT機器やエナジーハーベストに最適な製品となっている。

今後も、低消費電力化や小型化などに向けた要素技術、回路技術の開発に努力したい。

さらなる小型/低消費電力に向け米国での基盤技術研究、SiCビジネスも視野

――基盤技術開発に対する取り組み状況を教えてください。

清水氏 先端技術を積極的に取り入れることを目的に、2016年にR&Dセンターを米国シリコンバレーに開設した。R&Dセンターでは、電源ICの電源供給先であるプロセッサなどのデバイスの最新技術動向を把握しながら、さまざまな基盤技術の研究開発を実施している。既に、独自のマルチフェーズ方式や、レーザートリミングに代わる出力や機能設定技術などを米国発で開発し、製品に展開するフェーズにシフトしつつある。今後も、グローバルでの情報収集を行い、最先端技術をいち早く構築していく。

――トレックスの子会社で、ファウンドリー(受託製造専門企業)のフェニテックの技術開発状況はいかがですか。

清水氏 フェニテックは、ファウンドリーながら、自社でディスクリートデバイスの設計開発して提供するODM(Original Design Manufacturing)サービスを実施している。そのODMサービスの延長として、現在、価格競争力のあるSiC(炭化ケイ素)によるショットキーバリアダイオード(SBD)の開発を進めている。SiC MOSFETについても、低価格で高品質という特長を持つ製品を実現するために、「つくばパワーエレクトロニクスコンステレーション」に参加し研究を実施している。SiCデバイス製造に必要な製造装置導入も順次進めており、SiCデバイス関連ビジネスを立ち上げていく予定だ。


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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2019年9月19日


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