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CEATEC 2019 特集

電池事業を本格化する村田製作所、蓄電池工場を公開買収から2年、技術融合の成果アピ―ル(2/3 ページ)

» 2019年09月10日 11時30分 公開
[永山準EE Times Japan]

くぎを刺しても燃えない、FORTELIONの「高い安全性」を強調

 蓄電事業の展開に際して、同社は「安全性を重視している」ことを何度も強調していた。さまざまな電極材料を使ったリチウムイオン電池を製造するなか、蓄電システムにFORTELIONを使用しているのも、FORTELIONが高い安全性を備えているからだ。

リチウムイオン電池の電極材料にはさまざまな種類がある。同社は、「長い製造の歴史があるので、用途に応じて最適な電池を届けることができる」としている(クリックで拡大)出典:村田製作所

 正極にオリビン型リン酸鉄系を用いるFORTELIONは、その強固な構造から熱安定性が高いのが大きな特長であり、災害などの不測の事態でも発火することのない高い安定性が求めらる定置型蓄電システムに適しているという。実際に2016年、消防用設備等の非常電源として、消防法上の技術水準に適合していることを認定する「消防認定」を『リチウムイオンとして初めて』(村田製作所)取得。2019年5月には、バッテリーセルに起因した火災リスクを検証する国際基準「UL9540A」レポートも『日本で初めて』(同)取得している。

FORTELIONの特長、高い熱安定性のほか、15年以上の長期間の保存特性、1万4000サイクルで70%のサイクル特性、1時間で90%以上の急速充電も可能という特性もあり、充放電を繰り返し長期間使用する蓄電システムに適しているとしている。一方、デメリットとして動作電圧が低い、エネルギー密度が低いといった点があるが、同社ではコバルト系、三元系など正極材料を用いるリチウムイオン電池も製造しており、性質に応じた用途で展開しているという(クリックで拡大)出典:村田製作所

くぎ刺し試験でも「燃えない」

 電池の安全性を担保するため、村田製作所では、満充電状態で強制的に内部短絡を起こす試験や、バーナーでの加熱、浸水、圧壊などさまざまな安全性試験を実施している。

 この日は、FORTELIONの「くぎ刺し試験」が報道関係者向けに公開された。試験は、電池の横腹にくぎを刺して短絡させ、発火するかどうかを見るもので、三元系のリチウムイオン電池と比較する形で実施した。

 三元系の電池は、くぎが刺さった直後に火を噴き、300℃以上まで温度が急上昇したのに対し、FORTELIONは約120℃までは温度が上がったものの、構造が強固で酸素を放出しないため発火することはなく、安定した状態を保っていた。

左=三元系のリチウムイオン電池。くぎを刺した直後の火を噴きだした/右=試験後の状態。無残に焼け焦げている(クリックで拡大)
左=FORTELIONの場合、電解液は飛び出しているものの、燃えることはなかった(クリックで拡大)

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