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» 2019年09月30日 11時30分 公開

江端さんのDIY奮闘記 介護地獄に安らぎを与える“自力救済的IT”の作り方(1):誰がために「介護IT」はある? (1/7)

今回から、「介護のIT化(介護IT)」をテーマにした新しい連載を始めます。人材不足が最も深刻な分野の一つでありながら、効率化に役立つ(はずの)IT化が最も進まない介護の世界。私の実体験をベースに、介護ITの“闇”に迫ってみたいと思います。

[江端智一,EE Times Japan]
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人材不足が最も深刻な分野の一つでありながら、効率化に役立つ(はずの)IT化が最も進まない介護の世界。私の実体験をベースに、介護ITの“闇”に迫りつつ、その中から一筋の光明ともなり得る、“安らぎ”を得るための手段について考えたいと思います。


姉からかかってきた1本の電話

 その事件は、今から4年前の2015年1月28日(水)の18時半頃、姉から、オフィスで仕事をしていた私の携帯電話にかかってきた1本の電話から始まりました。

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 「―― 父さん、今どこにいる?」

 当時、母は介護施設に入所しており、父は実家(名古屋市の郊外)で一人暮らしをしていました。週に1〜2回程度のヘルパーさんに父の世話をお願いしていましたが、父は自分の車を使って外食することも多かったです。また、時々は、施設にいる母を見舞いに行くこともあったようです。

 当時、父は携帯電話を自宅や車の中に置き忘れることも多く、また電話を使うことが難しくなってきていました。

 姉は、実家近くの婚家に住んでいて、一人暮らしの父の様子を見るために、仕事の後に、頻繁に実家に立ち寄っていましたが、その頃、父は、夜になっても実家にいないことが多くなっていました。

 姉から相談を受けていた私は、父の車にココセコムのGPSデバイスを取りつけて、PCを使って、いつでも父の車の位置がいつでも分かるようにしました。

 「ココセコム」の電源は、自動車から常に取り続けることができるので、充電不要で、自動車停止時でもその位置が分かる、というメリットがありました(単体で使用していると、充電切れで、サービスが使えなくなることがある)。

 また、姉が私に、父の居場所(=父が運転する車の位置)を問い合わせてくる頻度は、月に1回程度でしたので、私は月額900円のメニューを選びました。

 私がどこにいても(多くの場合、横浜のオフィスか東京の自宅)PCのWebブラウザを使って、最大月10回は無料で父の車の位置を調べられるこのサービスは、非常にコストパフォーマンスに優れているものでした。

 さて、話を戻します。

 その日、姉から連絡を受けた私は、携帯電話をハンズフリーにして、いつもの通り、「ココセコム」のログイン画面にアクセスしました。

 父は、市役所前にあるカラオケ付きの食堂(歌いながら食事ができる?)にいることが多く、大抵の場合は、その店の位置で発見することができるのですが、その時は、表示された地点から、父が帰宅の最中であることが分かりました。

 ですが、よく見ると、父が変な場所にいることに気が付きました ―― 父の車が、食堂と自宅の中間地点ではない道路上にいたからです。

 ココセコムは、アクセスした時の父の車の位置情報を地図上に表示しますが、リアルタイムで表示し続けることはできません。父の車の移動の変化を見たければ、定期的に(例えば10分毎に)、検索をする必要がありました。

 しかし、月額900円のメニューでは「最大10回まで無料」という縛りがあったので、それほど頻繁に使うことはできませんでした ―― その時の私は、まだ「最大10回」などというのん気なことを考える余裕があったのです。

 その後、30分程度、父の車の位置をトラッキングし続けていた私は、父の車が、自宅方面に方向転換したことを確認して、ホッとしました。

 姉には「無事帰宅ルートに乗った」と電話で報告して、その日はそのまま自宅に帰宅しました ―― 家に到着するまでの約2時間、私はそのことをすっかり忘れていました。

 ところが、これは、事件の幕開けに過ぎなかったのです。

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