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» 2019年10月03日 11時30分 公開

この10年で起こったこと、次の10年で起こること(39):iPhone 11 Proを分解、パッと見では分からない劇的変化が潜んでいた (2/3)

[清水洋治(テカナリエ),EE Times Japan]

3個のカメラを収めるための工夫

 図3はコンピュータ基板と、iPhone 11 Pro下部の端子(を含むフレキシブル配線)の様子である。2層基板がメインコンピュータ基板だけでなく、端子部にも採用されていた!! この2層基板にはオーディオ関係のチップ(ヘッドフォン関係)や電源関係のチップが配置されている。従来コンピュータ基板側にあったものがLightningコネクターの近くに移動し、さらに面積を縮小するために、2階建て基板が採用されている。振動を発生させるTAPTICは小型化され、2階建て基板に充てる面積を生み出している。2階建て部分だけで4チップが収まっている!!

図3:2カ所に使用されている2階建ての基板構造 (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 iPhone XSまでコンピューティング基板にあったデバイスを別の場所に移動させるなどしてスペースを生み出し、3個目のカメラを置く場所を作ったことになる。iPhone 11 Proは、既存部品や汎用部品を単に組み合わせて作られているわけでなく、一つ一つの部品のサイズが意味を持っていることになる。2階建て構造はAppleだけでなく今や多くのメーカーが使う技術である。2019年に発売されたZTEやVIVOなどの中国メーカーのスマートフォンでも2階建て基板は使われている。しかし内部で2カ所以上2階建てを使う事例は少ない。HuaweiのP30 proとiPhone 11 Proくらいだ。今後も、スマートフォンのカメラ搭載数は増える見込みで、今以上にカメラに面積を明け渡す必要が生じるだろう。同時に電池容量を減らすわけにはいかないので、さらに2階建て基板は3カ所、4カ所へと増加する可能性は高いと思われる。

「iPhone 11 Pro」が搭載するチップにも変化が

 図4は、iPhone 11 Pro(廉価モデルの「iPhone 11」もほぼ共通)で新規に採用されたチップの一部である。弊社ではほぼ全チップを開封して、内部の回路、チップの解析も行っている。

図4:「iPhone 11 Pro」には多くの新チップが採用されている (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 図4には代表的な2チップの内部写真を若干加工して掲載した(実際のテカナリエレポートでは鮮明な写真を掲載)。右側はA13プロセッサ。仕様はAppleから発表されている通りだ。A13プロセッサにはTSMCのプロセスとパッケージ実装技術が使われている。薬品を使ってパッケージを除去すると樹脂基板を介して、表面(「A13」の刻印がある)側に4枚のLPDDR4Xが2枚重ね、2カ所置かれている。樹脂基板の反対側にはA13プロセッサが配置される。

 A13の内部は配線層を除去して内部のトランジスタが全部見えるようにして弊社では解析を行っている。従来のプロセッサとの比較も行っているが、AI用の機能、GPUが大幅に強化されたものになっている!!

 左側はiPhone 11シリーズから新たに搭載されたU1チップである。U1チップはApple固有の型名(ここでは記載しない)がパッケージに刻印されており、Apple独自のUWBチップである。詳細はテカナリエレポートで報告としており、ここでは省くが、Appleの凄まじい半導体開発力が明らかになる。本チップだけでなく、A13プロセッサ、電源ICなどiPhone 11で新たに採用された新チップは多い。さらに同時期に発売されたApple Watch Series5でも多くの新チップが活用されている。毎年、決まった時間軸の中で凄まじい数の新チップを次々と生み出し、製品に採用し続けることができる数少ないメーカーとして、Appleの凄さを、チップ開封を通じて実感する。2019年にリリースされたAppleのほぼ全製品は「新チップが必ず使われている」のだ。

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