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脳に埋め込んだチップで、まひした手足を動かす仏の研究機関が開発

まるでサイエンスフィクションのような話だが、フランス・グルノーブルにあるフランス原子力庁(CEA)の研究機関で、グルノーブル大学病院内で活動する「Clinatec」が、体内に移植できるワイヤレスの脳インプラントデバイス「WIMAGINE」を開発した。

» 2019年10月21日 11時30分 公開
[Nitin DahadEE Times]

 まるでサイエンスフィクションのような話だが、フランス・グルノーブルにあるフランス原子力庁(CEA)の研究機関で、グルノーブル大学病院内で活動する「Clinatec」が、体内に移植できるワイヤレスの脳インプラントデバイス「WIMAGINE」を開発した。28歳の四肢麻痺(まひ)患者が、このデバイスと外骨格(exoskeleton)を使って、歩いたり両腕を動かしたりできたという。長期的には、同技術によって深刻な運動障害のある人たちが、自由に動けるようになると期待されている。

Clinatecが開発した「WIMAGINE」 画像:Clinatec(クリックで拡大)

 Clinatecが開発したWIMAGINEは、感覚運動皮質にある電気的活動を記録するデバイスだ。同デバイスは脳の電気的活動を高解像度で継続的に記録できるという。手足を動かそうとすると、その“意思”に関連した脳活動がリアルタイムにワイヤレスで解析用PCに伝送され、外骨格の動きを制御する。

 WIMAGINEは、頭蓋に半侵襲的に移植するように作られている。それにより、硬膜(脳の周りにある皮膜のこと。脊髄の一部)に接触させた64層の電極を用いて、硬膜下皮質表面電位(ECoG)を記録することができる。WIMAGINEのパッケージは、生体適合性や安全性を長期間確保するように開発されているという。「EU Directives for Active Implantable Medical Devices」が求める基準に準拠すべく、厳密なテストを実施したとClinatecは述べている。

Clinatecの外骨格 画像:Clinatec(クリックで拡大)

 四肢麻痺患者がこのようなデバイスによって、歩いたり両腕を動かしたりできたのは、これが初めてだという。Clinatecの「Brain Computer Interface (BCI)Project」での臨床研究の成果は2019年10月、医療雑誌「The Lancet Neurology」に発表された。

 Clinatecのプロジェクトの長期的な目標は、WIMAGINEによって、重度の麻痺や運動機能障害がある人たちが、車椅子やロボットアームを自分で操作できるようになることだという。

 今回、WIMAGINEの実験的治療に協力した28歳の患者は、外骨格を制御するため27カ月にわたりさまざまな訓練を行ったという。同患者はWIMAGINEと外骨格によって、腕を曲げたり広げたり、手首を回したりといった動作ができた。

 今回の発表によって、麻痺のある人たちが、より自由に日常生活を送れるようになるための可能性が大きく広がったのではないか。CEAのプレスリリースによれば、今後あと3人の被験者がWIMAGINEを使用する予定だという。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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