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» 2019年10月31日 11時30分 公開

江端さんのDIY奮闘記 介護地獄に安らぎを与える“自力救済的IT”の作り方(2):それでも介護ITを回してみせる 〜国内ユーザー5人の見守りシステムができるまで (5/8)

[江端智一,EE Times Japan]

介護で「遊ぼう」

 こんにちは、江端智一です。

 「介護IT」シリーズの第2回です。今回の前半、私は「エンジニア」という職種で得られた「技」を使って自力で作った「DIYの見守りシステム構築」に至るまでのドタバタを、時系列で紹介させて頂きました。

 前回、私の示したテーゼ、「『介護IT』とは、"誰のため"に、"何のため"にあるのか?」に対する、私が導き出した解「私たちが、『安らぎを得る』ためにITを使うのである」を、さらに振り切った実施例です。

 つまり、

 ―― 介護で遊ぼう

 です。

 不謹慎とでも、無分別とでも、無節操とでも、非常識とでも、軽率とでも、何とでも言ってください。

 私は、問題を解決することは、どんなプロセスでも「正しい」と思っています。そして、目の前の問題を解決するアプローチのプロセスで、自分を楽しませることを「悪いこと」とは思わないようにしています。

 私は「代案も出さず、行動もせず、批判して立ち去るだけのモラリスト(著者のブログ)」なんぞ、相手にしません。むしろ、私たちの人生において、「介護」が逃げられないミッションであるなら、そのプセスの1/100でも楽しめるような方法を見つけ出そうとしている人が、私は好きです。

 さて、前回「介護ITとは、介護サービスではなく、その一部ですらない」と決めつけた上で、「介護IT」と言われているものを整理しました。今回は、さらに、この中から、私たちエンジニアがDIYでできそうなものをピックアップしてみました。

 ざっと見たところ、「見守り」と「追跡」くらいの一部に手が出るくらいです。デバイス開発には、個人では負い切れない設備投資が必要となりますし、イベント通知に至っては、介護専門職向けのシステムなので、私たちが介入できる余地はありません*)

*)もっとも、ITリテラシーが絶望的に低い介護業界において、適正なシステム運用ができているか疑わしいですし、そもそも、システム見積もりの適正なコスト判断ができているのか、甚だ怪しいと思っています。

 前半では、私の「DIY見守りシステム」を動かすまでのドタバタを記載したのですが、この「ドタバタ」のコストは、相当の額に相当すると思います。

 では、市場の見守りサービスのコストはどうなっているのだろうか、と思い、ちょっと調べてみました。

 まずは、この見守りサービスに参入している業種を調べてみたのですが、正直、かなり驚きました ―― すごい数の企業が参入していたからです

 警備会社はもちろんのこと、郵送からインフラ、金融、家電、行政/自治体まで、「家」「各家庭」に手が届く業種であれば、参入していない業種を見つけるのが難しいくらい、ありとあらゆる業種が、このサービスに乗ってきています。

 ただ、全体的に、「本気で見守りするぞ」という気合を感じる広告を見つけられませんでしたし、そもそも、全体的にもうかっている感じがしません

 なぜ、そういうことを言えるかというと、顧客争奪に使われる定型文「加入顧客数○○万人突破!」というような、文言を見つけられないからです。これは、学習塾が実績を語る時には必ず使われますし、また、携帯電話会社(MVMOを含む)でも頻用されています。

 つまり、見守りサービスは、

(1)顧客が少ない(またはいない)
(2)サービスの差別化ポイントがない
(3)顧客にとって、費用対効果が実感できない

そして、

(4)大きな初期投資なしに参入できる

などが考えらます。

 実際に、(4)については、かつて、見守りサービスのボトルネックは、通信費でしたが、これが定額インターネットの普及によってなくなりました。ぶっちゃけ、私であっても、(銀行からお金を借りなくても)明日からサービス開始できる、と実感できる程度です。

 問題は、(3)の費用対効果の方です。下の表は、見守りサービスの内容ごとに、ざっくりした利用料金を調べてみたものです。

 ざっと見たところ、「そんなに高価とは思えないんだけどなぁ」と思いました。(「訪問」はびっくりするくらい高いと思いましたが)。それもそのはずです。これらのサービスは、「見守りの手段」は提供するけど、「見守りそのもの」を提供している訳ではないのです。

 最終的に見守るのは、その見守りシステムの利用者(多くの場合、"家族")になるのです。

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