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半導体業界への巨額投資は中国の自信を高めた第2次投資が始まる中国(2/3 ページ)

» 2019年11月26日 11時45分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

投資ラウンドPhase Iは、うまくいったのか?

 さらにEE Timesは、「Big Fundの最初の投資ラウンドは、どのように行われたのか。また、2回目の投資ラウンドはどのようになる見込みか」と質問した。

 これまでの経緯を簡単に振り返ってみよう。Big Fundは、中国国内の半導体産業を育成するための大規模な資本投資プロジェクトであり、Phase IIの投資スケジュールとして、今後5年間にわたり2041億5000万元(約3兆円)という巨額の予算を投じていく予定だと発表している。Phase IIの投資額は、2014年に始動したPhase Iの約2倍となる。

 筆者が最も興味を持ったのは、中国国内で最初の投資ラウンドがどのように評価されたのかという点だ。Phase Iは成功したと評価されているのだろうか。どの企業が成功を維持しているのだろうか。Big Fundの投資利益率(ROI)に関する報告書はあるのか。より具体的には、どの半導体メーカーが、Big Fundのおかげで最優良企業になったのだろうか。

 しかし、筆者の考えは甘かったのかもしれない。中国がBig Fundに対して、綿密な調査をほとんど行っていなかったということが明らかになったのだ。最終的に、中国政府がどれくらい賢明な(または下手な)資金の使い方をしたのかを問題として取り上げるのは、一体誰なのだろうか。

「自分たちの金ではない」

 中国のファブレスチップメーカーの経営幹部から、「結局のところ、自分たちの金ではない」という、実に率直な答えが返ってきた。メーカー各社がBig Fundから受け取った資金は、銀行からの融資ではないため、受け取った側は誰も、もらい物に文句を言おうとは思わない。メーカー側の使命は、その資金を使い、さらなる増額を要求することにある。

 これまでのところ、最初の投資ラウンドの結果については、賛否が入り交じっている。「Big Fundのサポートを最も多く受けたのは、どの半導体メーカーなのか」とする質問に対して、具体的な企業名を挙げてくれる経営幹部はいなかった。例えばSpreadtrum Communications(RDA Microelectronicsと合併、現社名はUnisoc)はかつて、中国最大の期待の星とされていた。しかし現在、同社がどのような位置付けにあるのかは不明だ。Unisocは2018年初頭に、Intelの5Gモデムを搭載した5Gスマートフォンプラットフォームの開発に取り組んでいると報じられた。しかし、Intelは2019年夏に、スマートフォンモデム事業をAppleに売却してしまっている。

 またHiSilicon(Huaweiの半導体部門)は、国内最大規模の半導体メーカーであるが、同社の成功は自ら成し遂げたものであって、Big Fundから明確な後押しを受けたわけでは決してない。

 中国エレクトロニクス業界の観測筋は、Big Fundについて、「中国国内の半導体チップ業界の基盤を構築する上で不可欠な、長期的プロジェクトである」と述べ、少なくとも“哲学的な”観点からは肯定的な見解を示している。

 例えば、International Business StrategiesのCEO(最高経営責任者)であるHandel Jones氏は、EE Timesに対し、「Phase Iの重要な部分は、優位性のあるファウンドリー能力を構築することだ。Big Fundは、中国が強力な半導体業界の構築に尽力していることを示す証拠をもたらした。Phase IIの立ち上げは、Phase Iの目標を全て達成できなかったとしても、中国が諦めていないことを示唆している」と語った。

 VeriSiliconのCEOであるWayne Dai氏は、中国がBig Fundを創出していなかったら、中国の半導体業界は勢いをつけられなかっただろうと述べた。あちこちにある小規模なファンドでは、同業界や中国が国内の半導体業界を育てるための包括的なプランを後押しすることはなかったはずだとDai氏は説明した。

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