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» 2019年12月02日 11時30分 公開

光伝送技術を知る(8) 光トランシーバー徹底解説(2):光トランシーバーのForm Factor動向 (1/4)

今回は、光トランシーバーのForm Factorについて、その変遷を解説する。

[高井厚志,EE Times Japan]
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 光トランシーバーは差し替えあるいは置き換え可能な(Replaceable)モジュールの型式に関する標準がある。この標準をフォームファクター(Form Factor)とよんでいる。光トランシーバーは「QSFP-DDの400GBASE-DR4」というようにForm Factorとインタフェース名称で特徴づけられる。「QSFP-DD」がForm Factor、「400GBASE-DR4」がインタフェースの種類である。同じインタフェースをサポートする異なるForm Factorが複数存在する。

 Form Factorの変遷は光伝送技術の進展でもある。まずは、その歴史と動向を振り返ってみたい。

SFF委員会のHot Pluggable光トランシーバー

 Form FactorとはPCなどで搭載する部品の物理的寸法の規格であり、例えばPCマザーボードにもForm Factorの規定がある。1980年終わりごろ2.5”ハードディスクドライブ(HDD)がノートPC用記憶デバイスとして期待されていたが、各社各様の仕様で互換性もなく、ユーザーもサプライヤーも困った状況にあった。

 そこで、1990年に業界団体Small Form Factor(SFF)委員会が設立され、Form Factorの業界標準(SFF-8004 Small Form Factor 2.5" Drives)を制定した。1992年にその対象範囲を広げ、ストレージ関係で使用する光トランシーバーの標準も制定するようになった。

 SFF委員会における光トランシーバーの標準規格は形状やピンの定義などの物理的寸法仕様に加え、電気信号、モニター・アラーム・制御信号、診断や管理のための内部データ入出力インタフェースやコマンドやメモリマップなど、置き換え可能を目指したさまざまな仕様が含まれている。複雑な仕様規格となっているがForm Factorと呼ばれ、SFF委員会以外の規格でもそう呼ばれる。

 1990年代、コンピュータ光ネットワークとしてIBMのメインフレームと周辺装置を接続するネットワークESCONなどがあり、コネクターを含む光ファイバーケーブルやそれを挿入するレセプタクルの仕様があった。しかし、PCBに搭載されていた光トランシーバーの形状に関しては、レセプタクル部以外にはほとんど詳細な規格は無かった。

 American National Standards Institute(ANSI)はSCSI、HIPPI、ESCONなどのコンピュータネットワーク規格を統一する目的で1994年にFibre Channelの規格化を承認した。光トランシーバーはSFF委員会がAMP、Compaq Computers、Sun MicrosystemsとVixel が規格化したGBIC(Gigabit Interface Converter)を採用し、1995年に最初の規格が公表された。

 そのころ光トランシーバーは発光ダイオード(LED)を使用していたため、速度が150Mビット/秒程度に制限されていた。また、LEDの信頼度は高く、MSA(Multi-Source Agreement、詳細は後述する)はなかったが、1×9と2×9というPCBにはんだ付けされる光トランシーバーが各社から出ていた(この光トランシーバーは2000年代にIECで標準化される)。一方、テレコム通信で使用されていた1G以上のInP(インジウムリン)系の端面発光レーザーは、データコム応用においては高価であった。

 これに対し、東京工業大学伊賀健一によって考案されたVCSEL(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser、面発光レーザー)は、1989年ごろにBell研究所Jack Jewellらにより実用化のメドが立ち、米国が国家的に後押ししていた。このVCSEL使用を前提とした1G光トランシーバーGBIC(Gigabit Interface Converter)がSFF委員会により1995年に規格化されたのである。

 この時、PCB端辺にはんだ付けされた電気コネクターに挿入するPluggable光トランシーバーが採用された。さらに、故障時に他の光トランシーバーに影響なく交換可能なHot Pluggableという仕様が取り入れられた。これは当時の面発光レーザーの信頼度が低かったことが理由の一つであった。これ以降、メンテナンスの利便性などからHot Pluggableが主流となり、SFF委員会の光トランシーバーは全てHot Pluggableとなった。

 転送速度が1Gから10Gへと移行する中で、光インタフェース仕様標準化のリーダーはFibre ChannelからEthernetに移るが、SFF委員会は光トランシーバーの標準化の中心の一つとなっている。SFF委員会はANSIにより信任されたINCITS(International Committee for Information Technology Standards)の11 Task Group(T11)と連携し、MSAを後援し規格として採用してきた。なお、SFF委員会は2016年活動の場をSNIA(Storage Networking Industry Association)に移し、SFF Technology Affiliate(TA) Technical Work Group(TWG)となっている。

図1:SFF標準化の構造 (クリックで拡大)
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