メディア
パワーエレクトロニクス最前線 特集

本格的に立ち上がり始めた、GaN採用の充電器市場「GaNFast」はノートPCにも(2/2 ページ)

» 2019年12月23日 09時30分 公開
前のページへ 1|2       

「GaNFast」はノートPCにも

 Sheridan氏は、「GaNパワーデバイスは、動作電圧600V付近でシリコンに比べて性能が劇的に向上する。これが、充電器においてシリコンからの置き換えを図るスイートスポットになるだろう。ソフトスイッチングトポロジーと当社のGaN ICを組み合わせることにより、大幅な高効率化を実現することが可能だ。例えば、シリコンと既存のフライバックトポロジーを使用するモバイル充電器の場合、効率は87〜89%にとどまるが、ソフトスイッチングトポロジーでGaNを使用すると、93〜95%の高効率を達成することができる」と述べている。

 シングルハーフブリッジのGaNFast ICは、GaN-on-Siウエハーを使い、ドライバーとロジックをモノリシックに集積した耐圧650VのGaN-MOSFETだ。パッケージはQFN。最大10MHzのスイッチング周波数を実現するため、受動素子を小型化、軽量化できる。

「GaNFast」パワーデバイスの概要 画像:Navitas

 Siと初期段階のディスクリートGaN回路のスイッチング速度を制限する要因とされる、遅延と寄生インダクタンスを低減するためには、統合の実現が重要になる。伝搬遅延を5ナノ秒に縮小し、dV/dtを最大200V/ナノ秒に高めることにより、従来の65〜100kHzのコンバーター設計を、メガヘルツレベルのスイッチング周波数に高速化することが可能だ。このような集積回路は、フライバックやハーフブリッジ、共振などのさまざまな既存トポロジーの性能をMHzオーダーの周波数で高められるため、画期的なプロジェクトの商業的導入が可能になる。

 また、GaNFast技術は今後、ノートPCで採用される方向に進んで行くとみられる。Asusが発表したノートPC「ProArt StudioBook One」は、NVIDIAが推進するクリエイター向けPCプログラム「RTX Studio」の認定済みで、NVIDIAのGPU「Quadro RTX 6000」を搭載し、NVIDIAのACEレファレンス設計をベースとしている。NVIDIAとの協業により、新しい300WのAC-DC設計を採用して、Navitasの高速GaNFastパワーIC電力変換技術を適用し、強力でありながら軽量化と小型化を実現するポータブル充電器を開発したという。

Sheridan氏は、「独創的な専門家たちは、最高クラスのコンピューティング性能とモビリティを必要とする」と述べる。同氏は「NavitasはNVIDIAの技術者と協力し、従来の半分のサイズと重量で300Wを提供できるACアダプターの開発に挑戦した」と付け加えた。

「GaNFast」技術を採用したバッテリー充電器

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.