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スマホの電池が5日もつ、新型リチウム-硫黄電池豪大学の研究チームが開発

オーストラリアMonash University(モナシュ大学)が、リチウムイオン電池の5倍の容量を実現するリチウム-硫黄(LiS)電池を開発したと発表した。これにより、電気自動車の大幅な低価格化や、主電源の大規模ストレージなどを実現できる可能性が広がる。

» 2020年01月09日 15時30分 公開

 オーストラリアMonash University(モナシュ大学)が、リチウムイオン電池の5倍の容量を実現するリチウム-硫黄(LiS)電池を開発したと発表した。これにより、電気自動車の大幅な低価格化や、主電源の大規模ストレージなどを実現できる可能性が広がる。このリチウム-硫黄電池は、200回以上の充放電サイクルを経ても99%の電力効率を維持することが可能な他、スマートフォンに搭載した場合は、5日間連続で使用できるようになるという。

 この新型電池の開発を手掛けたのは、Monash Universityの機械工学・航空宇宙学部の研究者であるMahdokht Shaibani氏と、同氏が率いる研究チームだ。

左からMatthew Hill准教授、開発した電池を掲げるMahdokht Shaibani博士、Mainak Majumder教授 画像:Monash University

 研究グループは、製造プロセスに関する特許(PCT/AU 2019/051239)を申請している他、ドイツのフラウンホーファー研究機構(材料・ビーム技術研究所)などの研究パートナーたちのサポートにより、試作セルの製造にも成功したという。科学者たちは、「今回の新型電池の開発により、将来的に、携帯電話機や自動車、コンピュータ、ソーラーネットワークなどの製造方法が変わっていくだろう」と主張している。今回の研究内容については、Science Advances誌に論文が掲載されている。

 研究グループの参加メンバーには、Shaibani氏と、同氏が率いるMonash Universityの研究チームの他、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)や、ベルギーのUniversity of Liege(リエージュ大学)、フラウンホーファー研究機構、Beam Technologyなどからの研究者たちが名を連ねる。

 Monash Universityの教授で、論文の共著者の1人でもあるMainak Majumder氏は、「リチウム-硫黄電池の開発および実装により、自動車市場に大きな変革が起こるだろう」と述べている。

 これまで電池に関しては、寿命の長さと持続可能性とを備えた、新しいソリューションが求められてきた。このため、研究者たちは常に、充電容量が大きく長持ちする電池の開発に取り組んできた。

 リチウム-硫黄電池は、充放電サイクルが短く、硫黄電極の体積が膨張するといった点が、課題として指摘されていた。研究グループは、硫黄粒子向けに化学物質レベルでスペースを確保すべく、少量の高分子材料を用いて、電極の中に粒子を保持することで、硫黄粒子の間隔を広く確保するという構造を実現した。また、リチウムイオン電池と同じ材料を使って、硫黄正極を再構築することにより、全体的な容量や性能を低下させることなく、より大きな応力負荷にも耐えられるようにしたという。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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