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» 2020年01月24日 12時00分 公開

膨大な取材を終えて:「CES 2020」で感じた10の所感 (2/4)

[Junko Yoshida,EE Times]

3. 日本の40nmプロセスで製造される予定のAIチップ

 CESはAIチップのスタートアップがデモブースを設置するようなイベントではないが、会場ではAIチップ企業の幹部の姿が散見された。BlaizeやGyrfalcon TechnologyなどのAIハードウェアベンダーは、パートナーのブースにテクニカルポスターを掲示していた。

 EE Timesは、プレスルームでMythicの共同創設者でCEO(最高経営責任者)を務めるMike Henry氏にインタビューした。Mythicは、同社のアクセラレーターICを日本のユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン(旧三重富士通セミコンダクター)で製造する計画だという。

 ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパンは、超低消費電力の不揮発性メモリからRFまでの幅広い技術を持つファウンドリ専業メーカーで、300mmウエハー生産ラインを所有している。Henry氏によると、Mythicは間もなく、ホストに接続するためにPCI Expressインタェースと統合した同社初のAIアクセラレータチップとソフトウェア開発キット(SDK)のサンプル出荷を開始するという。

 AIレースには、NVIDIAのような企業が開発した高速処理や低遅延、高解像度を実現した大規模なAIモデルと、その対極にある小規模ながら精度に大きな影響を与える機械学習モデルが存在する。Henry氏は、「業界は現在、行き詰まっている」と述べる。

 Mythicは、両者の中間を取ることでスイートスポットを独占したいと考えている。それに向けて、低遅延と低コストを実現しながら、HDビデオを30フレーム/秒(fps)で処理できる強力なインメモリAIアクセラレーションチップの開発に取り組んでいる。同チップを使えば、システムベンダーはメモリ帯域幅にコストをかける必要がなくなるという。

チップを掲げるMythic CEOのMike Henry氏

 このようなAIアクセラレーションチップは、どういった用途に用いられるのだろうか。

 Henry氏は「高品質製品を対象としている」と述べ、次のように説明している。「AIアクセラレーションは、光量の少ない場所でも画質を高められる。ナンバープレートを検知して読み取ることも可能だ。駐車場では、セキュリティを強化できる。つまりAIは、新しいハードウェアを発明しなければ従来のカメラでは実現できないような、高品質のビデオキャプチャーやタスク処理の課題に対応できる」(同氏)

 Mythicのアクセラレーターの鍵となるのは、A-Dコンバーター(ADC)およびD-Aコンバーター(DAC)と組み合わせた、フラッシュメモリアレイで構成されるマトリックス乗算部である。上の写真でHenry氏が掲げているのは、1万個のADCが内蔵されたチップだ。

4. 将来を見据えた販売

Silicon LabsのCEO Tyson Tuttle氏

 消費者向けIoT(モノのインターネット)デバイスに対する当初の盛り上がりは明らかになくなっている。

 ほとんどの消費者は、1年以内にスマートフォンやウェアラブルデバイスを交換することが特別なこととは考えていない。これとは対照的に、産業市場向けのコネクテッドデバイスは長く使われる。

 Silicon LabsのCEOであるTyson Tuttle氏は、「IoT機器を産業用市場に展開したいならば、チップサプライヤーは、“その場限りの販売”と考えるべきではない」と述べる。(長く使用されることを見据えて)“未来に向けて”販売することが必要だ、と同氏は強調している。

5. “クローキングを解除する”という考え方

 ビッグデータの時代において、プライベートデータの保護に関心を寄せていたり、未来のAIアプリケーションに関してますます懸念したりしているなら、欧州に助けを求めるといい。

 大手技術企業による“イノベーション”に楯突くのをためらう米国の規制機関とは異なり、欧州の規制機関は、一般人を守ることに真っ向から取り組み、全力を尽くしてきた。プライバシーとAIは、欧州の最優先議題でもある。

 EUの一般データ保護規則(GDPR)は既に、欧州のみならず世界中の市場を方向付けている。データアグリゲーションやデータ分析に関わるグローバル企業は、自らのビジネス慣行がGDPRに違反していないか慎重に気を配っている。

DeCloakのデバイス

 今回のCESでわれわれは、台湾に拠点を置くDeCloak Intelligences(以下、DeCloak)という新興企業を知ることになった。同社の創業者らは、自らの技術について「ビッグデータ関連企業に、木を見ずに森を見させるもの」と簡潔に説明した。

 ソーシャルメディアの監視が増える中、「de-cloaking(クローキング*)を解除する)」というアイデアは、シリコンバレーの新興企業には決して浮かばなかったものかもしれない。

*)クローキング:外部から見えないようにすること

 DeCloakは、1mm角の“プライバシープロセシングユニット(PPU)”チップを開発した。このPPUには、乱数発生器が含まれている。例えば、スマートフォンに接続されたドングルに取り付けると、PPUはプライベートデータを全てブロックし、クラウドに自動的に移行されないようにする。

 DeCloakは、匿名化は医療データに欠かせないと考えている。データ収集する業者は「データを匿名にしている」とよく主張するものの、それをどの程度行っているかは定かではない。DeCloakによると、PPUを用いれば、患者は自分を匿名化することで、ビッグデータに依存する医学研究のような取り組みに気楽に参加できるようになるという。

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