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» 2020年02月25日 11時30分 公開

新型肺炎の影響:電子機器成長率、工場停止1カ月ごとに1%減か

現時点で、市場調査会社のアナリストは、コロナウイルスによる影響をどのように見ているのか。インフォ―マインテリジェンス(旧IHS Markitテクノロジー部門)のアナリストである南川明氏に、電子機器市場への影響について尋ねた。

[村尾麻悠子,EE Times Japan]

 新型コロナウイルス「COVID-19」の感染者数が世界各地で日に日に増す中、中国では工場の稼働再開が少しずつではあるが始まっている。ただ、終息のメドは立っておらず、半導体/エレクトロニクス業界では影響の予測に苦慮している。

米Johns Hopkins Universityが公開している「COVID-19」の感染者数マップ。本画像は、2020年2月21日午後3時(日本時間)に更新されたもののスクリーンショット 出典:Johns Hopkins University(クリックで拡大)

 現時点で、市場調査会社のアナリストは、コロナウイルスによる影響をどのように見ているのか。Informa Techの日本法人インフォ―マインテリジェンス(旧IHS Markitテクノロジー部門)のアナリストを務める南川明氏に、電子機器市場への影響について尋ねた。

――現時点で、電子機器市場への影響をどのように見ていますか

インフォ―マインテリジェンスの南川明氏

南川明氏 ざっくりとしたイメージとして捉えると、「工場が1カ月停止すると、電子機器市場の成長率が約1.1%低下する」のではないかと考えている。

 現在、電子機器の43%は中国で製造されている。割合が特に多い物を挙げるとノートPCは約86%、スマートフォンは約75%、白物家電は約72%が中国の工場で製造されている。現在、閉鎖している工場は中国全体の約30%と聞いている。つまり、(43%×30%=)約12.9%の電子機器に影響があるとみている。工場が1カ月停止されると、(12.9%/12カ月=)1.1%の影響があると試算できる。

 当社は、2020年における電子機器世界市場の成長率を4.5%と予測しているが、単純に考えれば、1カ月の工場停止でそれが3.4%に減少するということだ。仮に2カ月停止するとなると、さらに1.1%低下して、成長率は当初の予測の半分程度になってしまう。

 これはあくまでも生産面での予測なので、消費も落ちることを考えると、インパクトは大きい。

中国で製造されている電子機器の割合と、電子機器市場への影響 出典:インフォ―マインテリジェンス(クリックで拡大)

――閉鎖している工場約30%のうち、内訳は分かりますか?

南川氏 そのデータは、まだわれわれも持っていない。Informa Techは、中国では北京、上海、深センにアナリストが常駐しているが、現地のアナリストたちも、電話でしか取材ができず詳細を把握するのは難しいようだ。

 中国各地の工場も、従業員が戻ってこられずフル稼働とは程遠い状態だが、深センは、状況としては比較的マシなようだ。

――サプライチェーンへの影響は、どうでしょうか。

南川氏 サプライチェーンの面では、まだ大丈夫そうだと聞いている。在庫が多いのだろうと思う。

――製造業では、製造拠点を中国以外、特にベトナムなどに移す動きが以前からありましたが、今回のコロナウイルスによって、その動きが加速しそうです。

南川氏 それは十分に考えられる。特に、機器メーカーやEMS(電子機器受託製造サービス)が多く存在する台湾の存在が、より重要になってくるだろう。中国の工場の半分近くは台湾系のEMS企業の工場だ。台湾メーカーの間では、それらの製造拠点の一部を台湾に戻す動きがある。エレクトロニクス業界に関わる日本企業も、部品を売り込むなどビジネスをする際は、台湾の機器メーカーの動きを今まで以上にしっかり見ておくことが重要になる。

 工場の自動化もさらに加速するだろう。中国でも、前工程の工場はあまり止まっていないようだ。停止、閉鎖している工場の多くは人の手が必要な後工程の工場だ。後工程でも自動化が進めば、今回のような感染症による脆弱性も改善できるだろう。

――電子機器市場では、成長率の低下が避けられそうにないですが、半導体市場はいかがですか。成長率としては、電子機器市場よりも高い6%増と予測されています。

南川氏 半導体市場の成長も少し落ちるとは思うが、それ以上にメモリの価格が上がりそうなので、それで相殺するのではないか。

 半導体に関して言えば、5G(第5世代移動通信)端末やデータセンター、特にエッジデータセンター向けの半導体のオーダーが既に入っている。例えばTSMCには、5G端末向けの7nm適用チップのオーダーがAppleからもHiSiliconからも入り始めている。というのは、7nmチップのリードタイムが長くなっているからだ。パッケージングまで入れると5カ月くらいかかる。だから、Appleなどのメーカーは早めに発注している。その製造が、コロナウイルスが終息した途端、一気に立ち上がってくる。それに伴って他の部品も一気に必要になってくるので、半導体市場、電子機器市場が混乱する可能性があると考えている。

 製造能力がパンクするケースも出てくるだろう。とりわけメモリ、プロセッサ、データセンター絡みの電源で必要になるパワー半導体は、足りなくなる可能性も見ておいた方がいい。パワー半導体については、1.7kVのIGBTは太陽光発電や鉄道系で既に足りなくなっている。今後は、高耐圧だけでなく中耐圧のパワー半導体も足りなくなってくるのではないか。

 工場停止による影響はもちろん考慮しなくてはならないが、終息……願わくは春ごろには何とか収まってほしいが、終息後の、部品の需要についても考えておくことが重要だろう。

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