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EMC規制の始まりと、EMC対策部品の働き福田昭のデバイス通信(229) 2019年度版実装技術ロードマップ(39)(2/2 ページ)

» 2020年02月26日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]
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出る電磁雑音と入る電磁雑音の両方で対策

 デジタル機器と電磁雑音(電磁ノイズ)の関わりについては、2つの対策が必要とされる。1つは、デジタル機器が外部に出す電磁雑音がほかの機器に干渉しないようにすることだ。この電磁的な干渉を「電磁干渉」あるいは「EMI(Electro Magnetic Interference)」と呼ぶ。

 もう1つは、外部からデジタル機器に侵入する電磁雑音によって、デジタル機器の動作に不具合が起こらないようにすることである。この外部ノイズに対する感受性を「電磁感受性」あるいは「EMS(Electro Magnetic Susceptibility)」と呼ぶ。

 そしてEMIとEMSを合わせて「電磁環境両立性」あるいは「EMC(Electro Magnetic Compatibility)」と呼ぶ。EMIを抑えることとEMSの耐性を高めることには密接な関係があり、両者には共通点が少なくない。そのため、EMIを減らす電子部品(EMI対策部品)とEMS耐性(「イミュニティ」と呼ぶことが多い)を高める部品(EMS対策部品)を、まとめて「EMC対策部品」と総称することが多い。

EMC対策部品の主な機能

 EMC対策部品の機能とは、粗く言ってしまうと、信号と雑音を分離することである。ケーブルや配線などの伝送路を通る電気信号はふつう、雑音を含んでいる。EMC対策部品は雑音を分離することで、信号の品質を高めて不要なふく射を抑えるとともに、動作の不安定さや誤動作などのリスクを低減する。

 信号と雑音を分離する手法は、主に3つある。「周波数による分離」「伝搬モードによる分離」「電圧による分離」である。

 最初の「周波数による分離」は、一般的には雑音周波数が信号周波数に比べてはるかに高い周波数帯域に広がっているという性質を利用する。この性質を利用するEMC対策部品とは、すなわち低周波通過フィルタ(LPF:Low Pass Filter)である。この働きをするEMC対策部品には「インダクタ」「チップビーズ」「コンデンサ」「3端子EMIフィルタ」などがある。

 2番目の「伝搬モードによる分離」は、差動(ディファレンシャル)方式の伝送路で非常に有効な方法である。差動伝送では1対の信号線を逆相の信号が伝わる。雑音の多くは同相なので、同相信号(コモンモード信号)だけを除去するフィルタは、信号に影響を与えずに雑音だけを抑制できる。この働きをするEMC対策部品には、コモンモードフィルタ(CMF:Common Mode Filter)、ライントランス、フェライトコアなどがある。

 最後の「電圧による分離」では、低い電圧では何もせず、高い電圧が侵入したときだけ抵抗値を大幅に下げることで高電圧の侵入を防ぐ。静電気放電(ESD)や雷サージなどの突発的な高電圧パルスから、内部回路を保護するために使われる。この働きをするEMC対策部品には、バリスタやツェナーダイオード、ESDサプレッサなどがある。

2017年版(前版)ロードマップと2019年版ロードマップの違い。2019年版では「チップビーズ」が追加された 出典:JEITA(クリックで拡大)

次回に続く

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