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シリコンフォトニクスデバイスの試作体制を構築国内外の企業や大学も利用可能

産業技術総合研究所(産総研)電子光技術研究部門とTIA推進センターは、シリコンフォトニクスデバイスの試作体制を構築した。国内外の民間企業や大学もこれらの設計製造環境を利用することができる。

» 2020年03月02日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

複数ユーザーの専用チップを相乗りで製造

 産業技術総合研究所(産総研)電子光技術研究部門とTIA推進センターは2020年2月、シリコンフォトニクスデバイスの試作体制を構築したと発表した。300mmウエハープロセスを用いて複数ユーザーのチップを一括で製造する。国内外の民間企業や大学もこれらの設計製造環境を利用することができる。

 シリコンフォトニクスは、一般的なIC製造に用いられるCMOSプロセス技術と製造設備を使って、光デバイスを製造する技術である。大量生産によるコストダウンや、微細加工が可能なことから、IoT(モノのインターネット)や5G向け光デバイスの製造でも、この技術が注目されている。

 産総研は、最先端シリコンデバイスの公的研究開発施設「TIA推進センター」のスーパークリーンルーム産学官連携研究棟(SCR)を活用し、シリコンフォトニクス技術の研究開発に取り組んできた。これまで、300mmウエハープロセスを用い、低損失の光導波路や大規模光マトリックススイッチ、高速変調器といった光デバイスを開発してきた。

 これらの実績を基に産総研は、シリコンフォトニクスに関する「デバイス設計基本情報」や「標準デバイスメニュー」をまとめた「プロセスデザインキット(PDK)」を整備した。ユーザーはPDKに基づいてデバイスを設計すればよく、製造技術にかかわる詳細な知識は必要ないという。

 さらに、シリコンフォトニクスコンソーシアムは、試作を希望するユーザーに対しPDKの情報を開示するとともに、設計情報の集約や試作デバイスの分配などを行うためのユーザー窓口を設けるなど、相乗り試作を行うための体制を整えてきた。

 2019年5月には、複数ユーザーによる相乗り試作を実施、2019年9月にはコンソーシアム参加企業や大学へも対象を広げ、ウエハー試作を行った。現在、試作したチップを各ユーザーが評価中で、一部ユーザーからは良好な結果が寄せられているという。

左は相乗り試作で一括製造したシリコンフォトニクスチップの外観、右は25×30mmのユーザー試作領域と、その中に配置した5×15mmサイズのユーザー専用チップのイメージ (クリックで拡大) 出典:産総研

 これらのウエハー試作を通じて、研究開発用シリコンフォトニクス設計から製造までのエコシステムが十分に機能することを確認できたことから今回、外部ユーザーに対しても本格的な運用を始めることにした。

 シリコンフォトニクス技術は、光デバイスの大量生産に適しているが、1社で大規模な製造設備を導入することは極めて難しいという。今回の相乗り試作を活用すると、複数のユーザーが1枚のウエハーを共有して光デバイスを製造することができる。このため、従来に比べ試作費用を「5分の1」から「10分の1」に抑えることが可能と試算している。

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