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5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

MWCで聞きたかった、モバイル業界への7つの質問“普遍的な”5Gスマートフォンの登場は?(2/3 ページ)

» 2020年03月03日 11時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

3.英国が5GにおけるHuawei機器の限定的利用を指示、その影響は?

 英国は2020年2月初旬、Huawei機器の利用を全面的には禁止しない方針を決めた。政府機関は、英国の携帯電話事業者がHuaweiの5Gネットワーク機器を限定的に導入することを許可するという。

 具体的には、Huaweiは、5Gネットワーク基地局の機器のうち35%以上を提供することと、ネットワークトラフィックの35%以上を伝送することを許可されない。

 この「限定利用」という方針は、英国にとって良いニュースとは言い切れない。英国の事業者に思わぬ影響をもたらすことになるからだ。EE Timesで情報通信分野を扱うJohn Walko編集者は最近の記事の中で、「携帯電話事業者は、相互運用に関する問題を回避するために、4Gと5Gで同一ベンダーの機器を導入する必要がある。つまり、限定利用という方針によって、事業者は必然的に既に設置している4G機器の大部分の撤去を開始しなければならなくなる」と述べている。

 欧州内の他の国々が英国と同様の判断をするかどうかは分からないが、MWCは、携帯電話事業者が公開/非公開で意見交換し、次善策に関するアイデアを交換する機会になるはずだった。

4. NokiaとEricssonに投資?

 一方、トランプ政権が米国の携帯電話事業者によるHuaweiの機器の利用を全面的に禁止したことは、NokiaとEricssonにとって商機となるだろう。ただし、両社ともこれに対する戦略についてはコメントしていない。

 米司法長官のWilliam Barr氏は2020年2月初旬、「米国は、Huaweiに対するより強力な競争関係を築くために、EricssonとNokiaの支配的株式を取得すべきだ」と提案した。

 Walko編集者は、「Barr氏の主張によれば、政権の後ろ盾を持つ米国の産業界と金融界がこうした戦略の支援に回り、米国における両社の市場規模が統合されることになれば、世界市場でHuaweiに対する競争力を高め、セキュリティ上の懸念を払拭することができるようだ」と解説している。

 このBarr氏のアイデアは、Ericsson、Nokiaならびに、フィンランド、スウェーデン両政府のいずれにもまだ提案されていない。MWCは、EricssonもしくはNokiaが大西洋両岸を結ぶ投資を受け入れるかどうかを証明する良い機会になっていたはずだ。

5.中国は米国技術を“デザインアウト(設計から外す)”し続ける

 Eurasia GroupのPaul Triolo氏とKevin Allison氏は最近、「Will the battle over Huawei kill globalization?(対訳:Huaweiを巡る争いはグローバリゼーションの息の根を止めるか?)」というタイトルのエッセイを共同執筆した。両氏は、現在Huaweiが米国技術を“デザインアウト(設計から外す)”し過ぎていることについて説明している。

 確かに、Huaweiは既に、米国の部品を使わずに5G基地局を設計することに成功したと主張している。

 ここでの大きな質問は、「MWCが開催されていたら、そこでHuaweiと懇談しているのを目撃されていたのは、誰だったのか」というものだ。

 5Gの課題の1つとして、フロントエンドを正しく動作させるためには、膨大な数の部品やコンポーネントが必要になることが挙げられる。Yoleによると、メーカーはアップリンクとダウンリンクの両方のデータストリーム用に、フィルター、スイッチ、場合によっては低ノイズアンプ(LNA)を備えたパワーアンプ(PA)モジュールを追加で使用する必要があるという。また、各リンクのアンテナの最適化を実現するには、チューナーの数も増やさなければならない。

 米国によるHuaweiの追放が村田製作所、ソニー、東芝、太陽誘電、京セラといった日本の部品メーカーに好機をもたらしたことはよく知られている。だが、それだけではない。YoleのTroadec氏は、こうした圧力が、中国のエコシステムを強化する助けとなると見込んでいる。

 また、米国の部品メーカーやコンポーネントメーカーが大損したことは、言うまでもない。トランプ政権と中国の貿易戦争は、既に米国メーカーに無視できないほどの収益減少をもたらしている。Troadec氏は、その結果、グローバル市場における米国メーカーのリーダーシップが失われる方向に向かうこともあり得る、と指摘している。

6. レーダー搭載スマートフォンの是非

 Googleは2019年秋、「Pixel 4」を発表した。レーダーベースの技術を初めて搭載しており、「動きを検知する(Motion Sense)能力」を備えたスマートフォンということになる。

 Googleは「Soli」というプロジェクトのもとで、指によるタップや体全体の動きまで、人間のジェスチャー(身ぶり手ぶり)を幅広く追跡するレーダー技術を開発した。

 GoogleのいわゆるSoliチップとその基盤となるハードウェア技術は、Infineon Technologiesによって開発された。

 Pixel 4は、Infineonのレーダーチップに大量の機会をもたらしている。だが、レーダーを搭載したスマートフォンは、スマートフォン市場の新たなトレンドになるのだろうか?

 YoleのTroadec氏は、2020年にMWCが開催されていれば、「他のスマートフォンメーカーがレーダーチップへの意欲があるか確認するつもりだった」と述べている。

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