5G対応基地局市場、2025年は11兆3530億円規模へ：富士キメラ総研が調査

　富士キメラ総研は2020年2月、第5世代移動通信（5G）関連の世界市場を調査し、その結果を発表した。2025年の5G対応基地局市場は11兆3530億円と予測、2018年に比べ3倍に拡大する見通しだ。5G対応のスマートフォン市場は、2025年に9億台の規模となる。

　調査の対象となる市場は、5Gに関連する基地局が3品目、エッジ機器（スマートフォンや自動車、監視カメラなど、ユーザー側終端製品）が7品目、基地局用構成デバイス・材料が9品目、RFデバイス・CPUが7品目、無線通信デバイスが3品目、放熱・ノイズ対策が2品目、基板が3品目で、計34品目。

　調査期間は2019年8〜11月で、専門調査員によるヒアリングなどを実施した。また、主要関連企業15社の事例分析も行った。

基地局市場：2025年は2018年に比べ3倍

　基地局市場は、「D-RANマクロセル基地局」「D-RANスモールセル基地局」および、「C-RAN基地局」の3品目で調査した。基地局全体では、2019年見込みが4兆6380億円となった。5G向けの投資が本格化したこともあり、2018年に比べて21.1％の増加となる。2025年の市場は11兆3530億円と予測した。2018年に比べ3倍の規模である。

基地局の世界市場予測 出典：富士キメラ総研

　D-RANマクロセル基地局市場は、5G向け投資が増えていて、設置局数の増加が見込まれる。ただ、既設LTE基地局の「ベースバンド処理装置（BBU）」に搭載されたソフトウェアをアップデートし、5Gに対応するアンテナや、複数の無線送受信装置（RRH）をまとめたユニット「RUセクター」の追加などによって、5G共用基地局とするアドオン部分への投資が中心になるとみている。

　D-RANスモールセル基地局市場は、一時的に縮小するとみられる。マクロセル基地局の増設やアドオン投資、C-RAN基地局への投資などが優先されるためだという。中長期的には、ミリ波帯の普及なども追い風となり、需要は増加する。

　C-RAN基地局は、RUセクターを光ファイバーで接続することにより、広範囲のエリアをカバーすることができる。このため通信キャリアは、ネットワーク拡張時の投資コストを軽減することができる。複数の子局を集中制御し、干渉を防ぐことで通信の安定性や品質を担保できることも大きな特長だ。

5G対応スマホ市場：2025年に9億台

　5Gへの対応は、スマートフォンやCPE、監視カメラなどが先行する。2022年前後にはスマートウォッチやスマートグラスなどにも搭載されると予想した。スマートフォンにおいてミリ波の利用は限定的で、「Sub6」と呼ばれる6GHz以下の周波数帯が主体となる見通しだ。

　5G対応のスマートウォッチが市場に登場するのは、2021年以降となり、2025年の市場は2000万台規模と予測した。監視カメラも現状では5G対応の要求は低いという。スマートシティーの構築が進めば、セキュリティ機能の向上などから、5Gに移行する可能性は高い。

主な5G対応エッジ機器の世界市場予測。比率は各エッジ機器市場における構成割合を示す 出典：富士キメラ総研

基地局向けCPU・FPGA市場は2025年に1兆7600億円

　富士キメラ総研は、5G関連市場において注目するデバイス・材料として、5つの製品を挙げた。「基地局用アンテナ」「RRH」「基地局用CPUやFPGA」「モバイル機器用アンテナ」および、「ベーパーチャンバー」である。

　いずれも2025年に向けて大きな需要拡大が見込まれる製品である。特に、基地局用CPUやFPGAの市場規模は2025年に1兆7600億円と予測した。2018年に比べて約22倍となる。ベーパーチャンバー市場も同様に、2018年と比べ約16倍に膨らむと予想する。

基地局用アンテナの世界需要予測 出典：富士キメラ総研

RRHの世界需要予測 出典：富士キメラ総研

基地局用CPUとFPGAの世界需要予測 出典：富士キメラ総研

モバイル機器用アンテナの世界需要予測 出典：富士キメラ総研

ベーパーチャンバーの世界需要予測 出典：富士キメラ総研