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» 2020年03月09日 11時30分 公開

福田昭のデバイス通信(231) 2019年度版実装技術ロードマップ(41):差動伝送ラインを雑音から守るコモンモードフィルタ(前編) (1/2)

今回は、チップビーズとともにEMC対策部品の代表ともいえる「コモンモードフィルタ」の概要を説明する。

[福田昭,EE Times Japan]

信号と雑音の周波数が同じでも雑音を減らせる

 電子情報技術産業協会(JEITA)が発行した「2019年度版 実装技術ロードマップ」に関する完成報告会(2019年6月4日に東京で開催)と同ロードマップの概要をシリーズでご報告している。今回はその第41回である。

 本シリーズの第31回から、第4章「電子部品」の概要を説明してきた。第4章「電子部品」は、「4.1 LCR部品」「4.2 EMC対策部品」「4.3 センサ」「4.4 コネクタ」「4.5 入出力デバイス」の5つの節に分かれる。前々回から、「4.2 EMC対策部品」の概要を紹介している。前回はEMC対策部品の代表である「チップビーズ(チップフェライトビーズ、チップ型フェライトビーズインダクタ)」の概要をご説明した。今回は、チップビーズとともにEMC対策部品の代表といえる「コモンモードフィルタ(CMF:Common Mode Filter)」の概要を解説する。

2019年6月4日に東京で開催された「2019年度版 実装技術ロードマップ」完成報告会のプログラム。本シリーズの第31回から、第4章「電子部品」(プログラムの8番)の概要を紹介している。出典:JEITA(クリックで拡大)
第4章第2節「4.2 EMC対策部品」の目次詳細。ロードマップ本文から筆者が書き出したもの(クリックで拡大)

 チップビーズは、周波数の違いを利用して雑音を低減するEMC対策部品である。チップビーズを使うときに困るのは、信号の周波数帯域と雑音の周波数帯域が重なってる場合だ。このような場合、チップビーズは効力を発揮しない。

 同じ周波数の信号と雑音を分離できるEMC対策部品の代表が、「コモンモードフィルタ(CMF)」である。信号の伝送モードの違いを利用して雑音を低減する。「コモンモードチョークコイル」「コモンモードノイズフィルタ」とも呼ばれる。

2つのコイルが発生する磁束を結合させてインピーダンスを制御

 コモンモードフィルタは普通、2本の入力端子と2本の出力端子を備える。それぞれの入出力端子は対(ペア)を構成している。コモンモードフィルタの内部では、入力端子と出力端子の間にコイル(インダクタ)を挿入してある。2つのコイルが発生する磁束は、コイルの中を貫通するコア(磁性体コア)によって相互に結合する(磁気結合)。

 ここで2つの伝搬モードを考える。1つはコモンモードフィルタを通過する電流のペアが、同じ方向で流れる場合(同相信号)。もう1つは、電流のペアが反対方向で流れる場合(逆相信号)である。

 同相信号の場合、2つのコイルが発生する磁束は同じ方向になる。磁束が重なることでコイルのインダクタンスが増加し、信号を大きく減衰させる。逆相信号の場合、2つのコイルが発生する磁束は逆の方向になる。磁束は相互に打ち消しあうのでコイルのインダクタンスが小さくなり、信号をそのまま通過させる。

コモンモードフィルタの基本構造と動作原理、等価回路。図版の出典:EDN Japan(クリックで拡大)

 同相で信号を伝えるモードは同相モード、コモンモードなどと呼ばれる。この同相モードを減衰させるので、「コモンモードフィルタ」と呼ぶ。逆相で信号を伝えるモードは差動モード、ディファレンシャルモード、ノーマルモードなどと呼ばれる。差動モードによる信号伝送(差動伝送:Differential Signaling)は、最近の高速伝送インタフェースのほとんどに使われている。

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