メディア

電子回路を雑音から保護する積層チップバリスタ福田昭のデバイス通信(233) 2019年度版実装技術ロードマップ(43)(1/2 ページ)

今回から、EMC対策部品のうち、電子回路を雷サージや静電気放電(ESD)などの雑音から保護する部品を説明する。まずは「積層チップバリスタ」について解説する。

» 2020年03月18日 13時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

雷サージやESDなどを吸収する電子部品

 電子情報技術産業協会(JEITA)が発行した「2019年度版 実装技術ロードマップ」に関する完成報告会(2019年6月4日に東京で開催)と同ロードマップの概要をシリーズでご報告している。今回はその第43回である。

 本シリーズの第31回から、第4章「電子部品」の概要を説明してきた。第4章「電子部品」は、「4.1 LCR部品」「4.2 EMC対策部品」「4.3 センサ」「4.4 コネクタ」「4.5 入出力デバイス」の5つの節に分かれる。第39回からは、「4.2 EMC対策部品」の概要を紹介している。第40回は雑音対策部品の代表である「チップビーズ(チップフェライトビーズ、チップ型フェライトビーズインダクタ)」の概要を、第41回第42回は同じく雑音対策部品の代表である「コモンモードフィルタ(コモンモードチョークコイル)」の概要をご紹介した。

2019年6月4日に東京で開催された「2019年度版 実装技術ロードマップ」完成報告会のプログラム。本シリーズの第31回から、第4章「電子部品」(プログラムの8番)の概要を紹介している。出典:JEITA(クリックで拡大)
第4章第2節「4.2 EMC対策部品」の目次詳細。ロードマップ本文から筆者が書き出したもの(クリックで拡大)

 今回からは、EMC対策部品の中でも、電子回路を雷サージや静電気放電(ESD)などの雑音から保護する部品を説明していく。初回である今回は「積層チップバリスタ」の概要を述べる。積層チップバリスタは「バリスタ」の一種である。そこで始めは「バリスタ」について解説する。

 「バリスタ」は2端子部品であり、通常は非常に高い抵抗値を有する絶縁素子である。材料には酸化亜鉛(ZnO)やチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)などのセラミックスが使われる。

 バリスタは電源線(あるいは信号線)と接地線(グランド)の間に挿入して使う。電源ライン(あるいは信号ライン)が正常に働いているときは、絶縁素子であるバリスタはコンデンサに見える。ここで雷サージや静電気放電(ESD)などの高電圧電流パルスが電源ライン(あるいは信号ライン)に侵入してバリスタに加わると、バリスタの抵抗値が急激に減少する。バリスタの中を電流が通過し、電源ライン(あるいは信号ライン)の電圧が低下する。このようにして電子回路を高電圧の電流パルスから保護する。

クランプ電圧、バリスタ電圧、サージ耐量、最大許容回路電圧

 バリスタの基本特性を表す仕様には、「クランプ電圧(制限電圧)」「バリスタ電圧」「サージ電流耐量」「最大許容回路電圧」などがある。「クランプ電圧(制限電圧)」は、高電圧の電流パルス(電流波形の立ち上がり時間(厳密には波頭長)8マイクロ秒、半値幅(厳密には波尾長)20マイクロ秒)をバリスタに印加したときに、バリスタの端子間に発生する電圧である。バリスタが電流パルスを吸収したあとに、保護対象である電子回路に加えられる電圧を意味する。

 「バリスタ電圧」は、バリスタの端子間に1mAの電流が流れるときの端子間電圧である。バリスタ電圧よりも低い電圧ではバリスタは動作しておらず(コンデンサ状態)、バリスタ電圧よりも高い電圧では、バリスタは動作している(低抵抗素子状態)とみなせる。

 「サージ電流耐量」は、バリスタが耐えられる電流パルスの大きさである。高電圧の電流パルス(電流波形の立ち上がり時間(厳密には波頭長)8マイクロ秒、半値幅(厳密には波尾長)20マイクロ秒)をバリスタに5分間隔で2回印加したときに、バリスタ電圧の変化が10%以下となる電流パルスの最大値で表す。

 「最大許容回路電圧」は、バリスタに連続して印加できる電圧の最大値である。直流と交流で最大許容回路電圧は異なる。最大許容電圧を超える電圧をバリスタに加え続けると、バリスタは劣化し、さらには破壊に至る。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.