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光トランシーバーのForm Factor規格(その1)光伝送技術を知る(9) 光トランシーバー徹底解説(3)(1/3 ページ)

光トランシーバーには多数のForm Factorがある。今回は現在もデータコムで使用されている主流のForm Factorを独断で選び解説する。

» 2020年04月07日 11時30分 公開
[高井厚志EE Times Japan]

主流のForm Factor

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 光トランシーバーには多数のForm Factorがある。市場要求と技術革新にユーザーとサプライヤーのビジネス戦略が絡み、市場競争の中で生まれたが、その中で、生き残り、主流となったForm Factorは多くはない。

 前回述べたようにForm FactorはMSA(Multi-Source Agreement)という業界標準である、米国ではANSIのFibrechannel、SFF委員会が採用し規格を公開してきた。

 今回は現在もデータコムで使用されている主流のForm Factorを独断で選び解説する。規格文書等にインターネットのリンクが張ってあるが2020年1月末に確認したものだ。

(1)はんだ付け固定用光トランシーバーForm Factor

 1990年頃のコンピュータ間やストレージを結合するLAN(Local Area Network)で使用された光トランシーバーは、標準化された光ケーブルの光コネクターをインタフェースとする以外は、各社各様であった。

 当時ははんだ付けでPCBに固定する光トランシーバーで、PCBの端に搭載し、ケースのパネルの窓穴あるいは光アダプターを通して光コネクターを挿抜する。低速では長寿命のLEDが中心であり、Laserは平均寿命20年が保証されていた。また、故障は摩耗劣化モードであったためモニターによって交換時期が予測できた。

 このような状況で共通規格のForm Factorが生まれてきた。「1×9」とその発展形でもある「SFF」である。これらは光トランシーバーをボードにはんだ固定して光特性まで保証した装置を提供できることが特徴で、現在でも使用されている。

1x9 Optical Transceiver

 このForm Factorは名前の通り1列の9ピンを有する光トランシーバーである。1990年代に広く製品化された。はんだ付けすることで光インタフェースを保証でき、取り扱いが容易な2連SC光コネクターの光トランシーバーとして現在も2.5G以下の製品が商品化されている。

 この派生で、テレコム応用として「2×9」という9ピン2列のForm Factorも商品化された。1×9の標準規格化は既に市場に少しずつ異なる仕様の多くの製品が出回っていたこともあり実現しなかった。2000年以降にIEC TC/SC86C WG4において後述のSFFとともに標準化された。

図1 1×9光トランシーバー例の外形写真
項目 説明 備考
規格文書 IEC-62148-5 有料
光インタフェース 2連SCコネクター
送受信のコネクター位置は図2に示す
FCやST、MUやLCコネクター仕様の製品もある
電気インタフェース 9ピン
ピン位置はフットプリント図2に示す
信号レベル:IECでは規定されていないが通常ECLあるいはPECL
機械的仕様 製品外形仕様を図3に示す
2本のMounting stubは基板にはんだ付けし光コネクターの挿抜に対する機械強度を確保
 
製品例 Broadcomデータシート例  

図2 1×9光トランシーバーのフットプリント(Keep-out-areaは規格参照)
図3 1×9光トランシーバーの外形図(基準面などは規格を参照)

SFF Optical Transceiver

 このForm Factorは「1×9」あるいは「2×9」の発展形で、細径のLC光コネクターを採用した細身のはんだ付け光トランシーバーである。

 MSAの名称が“Small Form Factor Transceiver Multisource Agreement”だったので“SFF Transceiver”と呼ばれる。Fibrechannel、SFF委員会の規格がSFFで始まるので、SFF委員会が制定した規格と混乱したエンジニアもいた。

 SFFはIECのTC/SC86CのWG4というグループで標準化が進められ、2002年に規格化された。当時、300pin MSAの成功から、トランシーバー規格の標準化の重要性がIECでも認識され、WG4が発足した。筆者も国内委員会WGや時々IEC会合にも参加したがデジュール標準化の重さ、遅さを感じた。その後MSAをほとんどそのまま採用するSFF委員会がForm Factorに関しリードしていくのも納得できる。

 SFF MSA規格を基にSFF委員会でも2003年にSFF-8437、“Small Formfactor Pin Through Hole Transceivers”を規格化している。この規格の前半はMSAドキュメントをスキャンしたと思われる図がコピーされていて、12pinや14pinが追加されていることから標準化の目的はここにあると考えられる。

図4 SFF光トランシーバー例の外形写真(左がAvago 10pin、右がFinisar 20pin)
項目 説明 備考
規格文書(*) IEC-62148-2 (10 or 2x5pin)
IEC-62148-3 (20 or 2x10pin)
(*)SFF委員会の規格はSFF-8437
有料
光インタフェース 2連LCコネクター
送受信のコネクター位置は図6参照
MU、MTRJコネクター仕様の製品もある
電気インタフェース 10/20ピン
10ピントランシーバーのピン配置を図5に示す
信号レベル:IECでは規定されていないが通常ECLあるいはPECL
機械的仕様 製品外形仕様を図6に示す。
2本のMounting stubは基板にはんだ付けされ、光コネクターの挿抜に対する機械強度を確保している
 
製品例 10pin 製品例20pin 製品例  

図5 10pin SFF光トランシーバーの電気ピン

図6 10pin SFF光トランシーバーの外形図(基準面などは規格を参照)
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