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» 2020年04月28日 11時30分 公開

経済学者の見解を知る:中国は本当にAI先進国なのか (3/3)

[Junko Yoshida,EE Times]
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中国のAI開発加速は米国がもたらしたという皮肉

 Ernst氏によれば、中国のAI開発は依然として断片的だという。だが、それでも中国では、実際に多くのAI関連の活動が行われている。この2つをどう説明すればよいのだろうか。

 Ernst氏はまず、「中国がAI開発をけん引している」とする主要なコメントを検証することから始めている。同氏は、AppleやMicrosoft、Googleでエグゼクティブを経験し、現在はベンチャーキャピタリストとして活躍しているLee Kai-Fu氏のコメントを引用している。Lee氏は2018年に発表した分析で次のように書いている。「中国が米国に勝てる可能性を秘めているのは、AIが“発見の時代”から“実装の時代”へ、そして“専門的知識の時代”から“データの時代”へと移行しているからだ。中国にとって今重要なのは、データの力である」

 Lee氏は、中国の成功の鍵は、「中国には、“AIアルゴリズムを学習させるために必要な膨大なデータの山をかき分け、分類する”という反復的な作業に長時間携わることができる、(欧米などに比べれば)比較的人件費が低い大卒者が、大勢存在することにある」と述べている。Lee氏は、中国は、“ビッグデータの宝庫”を利用して、低コストのAIアプリケーションのマスマーケットで先手を打つべきだと提案している。

 中国のAI産業の多くはLee氏のアドバイスに従っていたが、Ernst氏は、この戦略は中国にとってあまりうまくいかなかったと考えている。

 Ernst氏は、Lee氏の提案は「AIに関する永続的なイノベーションに対する根本的な誤読」がベースになってしまっていると指摘する。これは、AI開発における2つのフェーズ、つまり“発見の時代”と“実装の時代”が並行して起きているからだ。多くの新しいニューラルネットワークが登場する中で、AIはまだ進化している分野であることを考慮すると、中国は時代遅れのニューラルネットワークをベースとしたアプリケーションだけでは生き残ることができない。

 恐らく、Ernst氏が伝えている最も重要なメッセージの一つは、次のようなものだろう。「われわれの研究によって、中国が、米国の技術制限によって、コアとなる基礎技術で追い付くべく、AIの基礎/応用研究を強化せざるを得なくなったことが分かった」

 Ernst氏らが中国で行ったインタビューは、皮肉なことに、米国の輸出制限によって、中国は技術投資とイノベーション政策の改革を余儀なくされており、中国のAI開発における弱点の一つを修正するきっかけになるかもしれないことを示唆している。

 EE Timesのメール取材に対し、Ernst氏は、次のような回答を送ってきた。「米国が、AIやIT全般のイノベーションのペースを独り占めすることは、もはや不可能であることを受け入れる時が来ている。米国政府が、国際貿易における法の支配を破壊するのではなく、促進する政策に戻ることは、米国の産業界の利益になる。現在の米国の政策がもたらした甚大な損害を取り戻すには、長い時間がかかるだろう」

【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】

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