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電機大手8社決算、コロナの影響が大きく分かれる結果に大山聡の業界スコープ(29)(2/4 ページ)

» 2020年05月21日 11時30分 公開

産業メカトロニクスが大幅減の三菱電機

 三菱電機の2019年度売上高は4兆4625億円(前年比1.3%減)、営業利益2596億円(同308億円減)、当期利益2218億円(同48億円減)であった。

出典:三菱電機決算資料よりGrossberg作成

 重電システム部門は、中国や中東のビルシステムが減少したが、国内の新設事業の増加などで相殺し、売上高、営業利益ともにほぼ前年並みとなった。産業メカトロニクス部門は、FAシステム事業が自動車、半導体、工作機械、スマホ関連の需要が低迷し、自動車機器事業が新車販売の減速、1〜3月期のコロナウィルス感染の影響があり、大幅な減収減益となった。情報通信システム部門は、通信システム事業が通信業者による第5世代移動通信(5G)投資で増加し、情報システム・サービス事業もクラウド対応の需要増で増収、電子システム事業も宇宙システムや防衛システムの大型案件で増収、全体で増収増益になった。電子デバイス部門は、通信用光デバイスや車載パワー半導体の需要が増加し、増収増益。家庭電器部門は、国内外で空調機器が好調で増益になった。

 2020年度の見通しは、当初は売上高、営業利益ともほぼ2019年度並みを見込んでいたが、新型コロナウィルスの影響が7〜9月期まで継続する前提で、売上高4400億円分、営業利益1350億円分のマイナス影響があると見込んでいる。産業メカトロニクス部門の収益を期待できない局面なので、同社にとってしばらくは厳しい状況が続きそうである。

すべてのセグメントで増収増益のNEC

 NECの2019年度売上高は3兆952億円(前年比6.2%増)、調整後営業利益1458億円(同759億円増)、調整後当期利益1112億円(同642億円増)であった。

出典:NEC決算資料よりGrossberg作成

 社会公共部門は、自治体向けおよび医療向けが好調に推移した。社会基盤部門は、航空宇宙・防衛向けが堅調で、売上高、利益ともに同社のけん引役を果たしている。エンタープライズ部門は、金融向けが堅調だった。ネットワークサービス部門は、固定ネットワーク領域の増加、一過性の大型案件などで大きく伸びた。システムプラットフォーム部門は、ビジネスPC需要が好調で、リストラ効果による増益もあった。グローバル部門は、セーファーシティおよび海洋システムの増加によって、赤字幅が縮小した。

 2020年度の見通しは、売上3兆300億円(同2.1%減)、調整後営業利益1,650億円(同192億円増)、調整後当期利益990億円(同122億円減)を見込んでいる。ビジネスPC更新需要の一巡、グローバル部門の減収(ディスプレイ事業の非連結化)で全体では減収見込みだが、2019年度に発生した一過性費用の減少やリストラ効果などで、営業利益は増益見込み。ただし当期利益は2019年度よりも税費用が増加するために減益の見込みである。コロナウィルス感染の影響が懸念される中、同社としてはデジタル化、リモート化、オンライン化などがプラスに働く可能性もあり、特に下振れリスクを織り込んでいない。全体的に売上規模も収益規模もまだ不十分だが、今後は同社の伸びしろに期待したい。

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