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» 2020年05月25日 11時30分 公開

踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(2)量子コンピュータ(2):量子コンピュータよ、もっと私に“ワクワク”を (2/9)

[江端智一,EE Times Japan]

空想上のハードだけでアルゴリズムの研究は続いてきた

 さて、今回の「量子コンピュータ」を、Googleトレンドで調べた結果は、こんな感じでした。

 量子コンピュータの起源は古く、1980年代にさかのぼります。ただ、それらは量子コンピュータの可能性を論じているものでした。量子コンピュータは、モノ(ハードウェア)が存在しないのに、ロジックやアルゴリズムが先行的に提案され続けていました。

 「実際の量子コンピュータが、モノになりそうだ」と世間に確信させたのは、その30年後の2011年のカナダの企業D-Wave Systems社の「D-Wave」でした(ただし、次回以降にお話しますが、これは量子ゲートではなく量子アニーリングでした)。IBM, Google等が、それに続き現在の状況に至っています。

 ここで特筆すべきことは、頭の中にある空想上の量子コンピュータだけで、30年近くもアルゴリズムの研究が続けられてきた、という事実です ―― 私の正直な感想は「よく続けられたものだ」ということで、もっと生々しい言葉で表現するなら「よく予算が付いたものだ」ということです*)

*)[Tさんツッコミ!]量子力学に基づいて情報理論を構築する「量子情報理論」という学術分野が30年前に確立されて、現在に至っているようです。


 これについては、別の連載記事「困惑する人工知能 〜1秒間の演算の説明に100年かかる!?」の、「"納豆御飯ともやし炒め"を、毎日おいしく食べ続けられる人間だけが、真のAI研究者足りえる」をご参照ください。

 ただ、この「量子コンピュータ」は、どうも、他のバズワードとは、異なる傾向が見られます。最近2回ほどピークが観測されていますが、それ以外においては比較的安定して登場し続けています。

 これは仮説ですが、「量子コンピュータ」はバズワードの成立要件を満たせていないのではないか、とも考えています。"ロングテール"やら"ユビキタス"などとは異なり、内容が難しすぎて「分かったような気にすらなれない」、そして、「分かったような気になれないもので騒ぐのは難しい」ということです。

 しかし、ここで一つの疑問が生じます。それは「AI」に対する世間の狂い方です。私の知り得る限り、「AI」だけは、「その技術的な理解をさぼっても良い」という社会的合意を獲得した、例外的なバズワードです。

 実際のところ、世間も、本当は「AI」がバズワードであることを知っていたように思えます。なぜなら、今回の新型コロナウイルス災禍において、私は、「"AI"なるものが何か役に立ったというニュース」も、「"AI"が全く使われていないことに憤っている人」も、見つけることができなかったからです。

 要するに、大半の人が、「AI」なるものに何も期待していなかったのです。ちょっと肩透かしを喰らった気分です。ちなみに私は、「東京都が管理するAIによる緊急自体宣言発令の提案」というニュースの登場をずっと待っており、即座に「ツッコみを入れる」準備もしていました(本当)。

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