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ロボット向けToFカメラ、距離と画像で高精度に測距Amazonで安価に買える(2/2 ページ)

» 2020年05月28日 09時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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“小型で安価”な産業向けToFカメラを目指した

 シーアイエスで社長を務める村岡祐輔氏によれば、DCC-RGBD1の開発は、「ROS(Robot Operating System)のユーザー向けに、簡単に使えるToFセンサー開発キットを作る」というコンセプトの下、ADIからの提案で始まったという。

 「当初はToFセンサーのみを使用する予定だったが、当社の強みでもあるカラーカメラも組み合わせようという話になった」と村岡氏は語る。ADIのフィールドアプリケーションエンジニアである柿沼淳氏は、「ToFセンサーはさまざまなメーカーが手掛け始めたが、シーアイエスのToFセンサーは分解能が高く、VGAの解像度を実現している。当社が声をかけた当時、VGAを実現しているのはシーアイエスだけだった」と、開発の背景について述べる。

 スマートフォンへの搭載も進んでいるToFセンサーだが、測距の精度は常に高精度というわけではない。物体の表面の反射率や外乱光の影響を受けることがあるからだ。村岡氏は、「そこで、ToFセンサーで物体とのおおよその距離を測定し、カメラで撮影したカラー画像も使うことで、より高精度な物体認識などのアプリケーションが可能になると考えた」と説明する。

 さらに、既存のToFカメラは、産業用途寄り、民生用途寄りの製品はあるものの、前者についてはサイズが大きく、後者については製品寿命が短く、耐久性やサポートといった面で産業利用は想定されていないと思われる物が多い。「“その中間”、つまり産業向けで小型のToFカメラはあまりないのではないか」と村岡氏は説明する。

 そうした背景を踏まえ、「なるべく小型で、顧客が3Dプリンタなどで外筐を作って試すことも可能な製品を開発したかった」(村岡氏)という。

 価格も16万9400円(税込)とできるだけ低く抑えた。「ビジネスを度外視し、なるべく利益を削っている。ポケットマネーとまでは言わないが、一般企業の部課長レベルの決裁で購入できるような価格に抑えた」(村岡氏)。DCC-RGBD1は、Amazonから購入できる。

ROSドライバーも公開

 さらにADIは、東京オープンソースロボティクス協会(TORK)の協力を得て、DCC-RGBD1のROS(Robot Operating System)ドライバー(Linux対応)を開発。GitHubにて公開している。これにより、障害物検知機能やPoint Cloud(点群)への変換といったアプリケーションを開発しやすくなる。ADIでフィールドアプリケーションエンジニアを務める門川貴彦氏によれば、ADIはこうしたROSのサンプルプログラムを幾つか公開している。

ROSのサンプルプログラムの一例 出典:ADI(クリックで拡大)

 シーアイエスはWindows対応のSDK(ソフトウェア開発キット)を開発し、無償で提供する。Windows SDKはシーアイエスのWebサイトからダウンロード可能だ。

医療用途での引き合いもある

 村岡氏は、「当社にとってToFカメラは未踏の領域。今回のDCC-RGBD1は量産を意識して開発したわけではなく、目標販売台数は約100台だ。できればユーザーからのフィードバックをもらって、量産に耐えうる次世代バージョンを開発したい」と述べる。

 同氏は「DCC-RGBD1の主要なターゲット分野はロボット開発だが、いざ販売を始めると、医療など意外な分野での引き合いもあることが分かった。ロジスティクス分野での活用にも期待している」と続けた。ADIの柿沼氏は、「機械学習を使った物体認識では、距離データと画像データによって推論精度が上がるという研究もある。DCC-RGBD1は、そういった分野でも成果を上げられるのではないか」と述べた。

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