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» 2020年06月02日 13時30分 公開

Edge AI and Vision Alliance:設計でも存在感を増すクラウドコンピューティング

Edge AI and Vision Allianceの創設者であるJeff Bier氏は、「クラウドコンピューティングが、電子設計の全てを変えつつある。その背景には、設計者たちが現在直面しているさまざまな問題の多くが、クラウドで解決されるようになってきたということがある」と述べる。

[Sally Ward-Foxton,EE Times]

 Edge AI and Vision Allianceの創設者であるJeff Bier氏は、「クラウドコンピューティングが、電子設計の全てを変えつつある。その背景には、設計者たちが現在直面しているさまざまな問題の多くが、クラウドで解決されるようになってきたということがある」と述べる。

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 同氏は電話取材で、「電子設計エンジニアたちは現在、どのようなテーマについてより多くの情報を必要としているのか」とする質問に対し、「クラウドには、世界中のエンジニアリング分野を変化させることが可能な、最強の推進力がある」と強調している。しかしここで、「クラウドコンピューティングと電子設計には、一体何の関係があるのか」という疑問が浮かんだとしても無理はないだろう。

 Bier氏は、「クラウドは、電子設計のあらゆる側面に大いに関係している。そして現在、エンジニアたちの業務を劇的に変化させようとしている」と主張する。

 Bier氏は、「『MATLAB』は、今から10年以上前に、組み込みプロセッサ用のコードを1ステップで生成できる機能を搭載している」と説明する。組み込みDSPエンジニアはこれまで、アルゴリズムエンジニアからMATLABコードを取得し、それをアセンブリ言語(CまたはC++である場合が多い)に再コード化していた。MATLABのコード生成では、このステップを省くことができるため、時間短縮とコスト削減が可能だ。ただし、これを実現できるのは、MATLABがサポートしているプロセッサに切り替えた場合だけである。

 現在、AI(人工知能)/ディープニューラルネットワーク(DNN)などの分野では、TensorFlowやPytorchなどのオープンソースフレームワークベースのアルゴリズムが、さまざまなツールで組み込みプロセッサに実装されている。

 Bier氏は、「将来的に、『望ましいプロセッサとは、クラウドから組み込み実装までが最も容易なプロセッサのことである』という点が重要な要素になるのは間違いない。クラウドが勝利を得られるかどうかは、"組み込み実装ボタンがあるか”"どのプロセッサをサポートしているのか”といった点にかかっている。こうして勝利した組み込みプロセッサが機能するとなれば、自分でコードを記述するよりも驚くほど簡単な上に速いため、誰もがそれを使うようになるだろう」と述べる。

 Bier氏は、ディープラーニング技術を手掛けるスタートアップ(米国ワシントン州シアトル)Xnor.aiに注目している。同社は2020年1月にAppleに買収されている。Bier氏は「Appleは市場投入までの時間を短縮することの価値をよく分かっていたため、Xnor.aiに対して高額な買収金額を提示した」と述べている。

 同氏は、「クラウドベースの組み込みソフトウェアのあらゆる側面について検討しているところだ。例えばEDAツールは、そのほとんどが既にクラウドベースとなっている。私は、自分のPCB設計をクラウドで構築しているが、ここでも同じようなことが言える。『明日までに10個の試作を完成させるボタン』があるのはどのクラウドなのか、ということだ」と述べる。

 電子設計プロセスにおけるクラウドの重要性は、まだそれほど評価されていないが、状況は速いスピードで変化している。それは、既存のクラウド企業の規模によるところが大きい。

 Bier氏は、「FPGAメーカーはこれまで、FPGAプログラムの簡素化に向けた取り組みを進めてきた。これは最終的に、MicrosoftとAmazonが、クラウドでデータ並列コードのFPGAアクセラレーションを提供したことによって解決されている」と述べる。

 「FPGAアクセラレーションボタンを押せば、直ちに実行される。MicrosoftとAmazonがこの問題を解決できたのは、大規模かつホモジニアスな環境が整っていたからだ。サーバは全て同じ機種であり、少しずつ異なっているシステムが多数使われるというようなことがない。そして、FPGAメーカーでは対応できなかった問題を解決したのだ。これは、クラウドが設計や開発の最も重要な部分を担うようになった理由の一つとして挙げられる」(同氏)

 半導体メーカーは、自社プロセッサ用のコード生成機能をクラウド企業に開発してもらうために、何をすればよいのだろうか。

 Bier氏は、「AmazonやGoogle、Microsoftにとっては、自社のクラウドが使われてさえいれば、顧客がどのチップを使用しているのかはどうでもいい。自社チップが確実に最も簡単にターゲットになるかどうかを気に掛けているのは、半導体メーカーだけなのである。このため半導体メーカーは、大手クラウド企業と協業するだけでなく、自社での対応も進めることが必要だ」と述べる。

 また同氏は、「Intelのクラウドベース環境『DevCloud』では、開発者たちがコードを構築、最適化することができる」と指摘する。「次の論理的なステップは、あらゆるツールや開発ボードをIntelサーバに接続することだ」(同氏)

クラウドかエッジか

 Bier氏は、「この他にも、既存の組み込み開発メーカーが熟知する必要があるコンセプトとしては、エッジコンピューティングが挙げられる」と述べる。IoT(モノのインターネット)が普及し始め、多くの組み込み機器がコネクティビティを備えるようになったため、それぞれのシステムは、コスト、速度、プライバシーなどの観点から、クラウドとエッジでどのような演算処理を行うかのバランスを慎重に考えなくてはならない。

 一例が、赤ちゃんの動きや呼吸、心拍数をモニタリングするスマートカメラを手掛けるメーカーだ。モニタリングに関わる処理(インテリジェンス)は、組み込み機器とクラウド、どちらで行うべきだろうか。

 「処理機能をクラウドに置くということは、自宅のインターネット接続に障害が発生した場合、製品が動作しないことを意味する。一方で、クラウドにインテリジェンスを搭載する方を選んだことで、このメーカーは、製品を予定より1年も早く市場に投入できた。専用の組み込みシステムを開発する必要がなかったからだ」(Bier氏)

 クラウドベースにすることで、ベビーモニター企業は、新しいアルゴリズムを迅速に提供できるようにもなった。新しいアルゴリズムの導入は、わずか数回のキー操作で行うことができる。

 このベビーモニター会社は、アルゴリズムの反復処理をあまり必要としなくなったため、ほとんどの処理をエッジで行う第2世代の製品開発を検討しているという。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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