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5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

GSMAとO-RAN Allianceが協業、5G普及に向け北欧2社の対応に注目(1/2 ページ)

モバイル通信インフラのオープン化への移行をけん引する主要勢力の1つであるO-RAN Alliance(Open Radio Access Network Alliance)が、通信事業者の業界団体であるGSMA(GSM Association)と手を組むことになった。

» 2020年06月08日 11時30分 公開
[John WalkoEE Times]

GSMAとO-RAN Allianceが協業

 ついにこの時が来たようだ。モバイル通信インフラのオープン化への移行をけん引する主要勢力の1つであるO-RAN Alliance(Open Radio Access Network Alliance)は2020年5月29日(英国時間)、通信事業者の業界団体であるGSMA(GSM Association)と5G(第5世代移動通信)ネットワークにおけるオープンRANで協業すると発表した。

 O-RAN AllianceとGSMAは、「両グループで協業することにより、オープンネットワークエコシステムを調和させ、ネットワークソリューション向けの業界ロードマップに合意することが可能になる。新たな市場参入企業のために、アクセスネットワークのオープン性と柔軟性を可能な限り高めていきたい考えだ」と述べる。

 今回の発表は、一連の再編成の動きや、市場で既に確立されている基準を置き換える有望な新基準に参加したいと考える新規参入者たちの動きの中でも、最新の動向である。

 米国では数週間前に、31社のメンバー企業が参加する業界団体「Open RAN Policy Coalition」が設立された。Nokiaはこの時、意外にもメンバーに入っていなかったが、2020年5月末になって、参加予定であることを発表した。これにより、同社の最大のライバルであるEricssonは、多少なりともジレンマを抱えることになる。

 Huaweiは、モバイル通信事業者へのインフラ供給において明確な主導的役割を担っているが、同社が、米国が主導権を握るOpen RAN Policy Coalitionに参加を申し込むことはまずないと考えて間違いないだろう。

 またO-RAN Allianceは、Facebook主導のTIP(Telecom Infra Project)との協業について、「交渉は難しいのではないか」と評されていたが、数カ月前に、協業する方向で合意に至った。TIPは、最重要プロジェクトの1つとして、オープンネットワーク技術の開発に取り組んでいる。

 このような協業の動きは、通信インフラのオープン性を高めていく上で明らかにプラスの影響を及ぼすだろう。特に、分断化を回避できるだけでなく、オープンインタフェース向け仕様の開発を簡素化、迅速化することが可能になるため、最終的には既存の仕様を置き換えられるようになる。

 通信事業者は、RANのさまざまな部分の間でインタフェースを開設できる技術を採用することにより、複数のベンダーの製品を使用して、独自のRANを構築することができるようになる。3GPP仕様をベースとした既存のセットアップやネットワークでは、全て同じサプライヤーの製品を使用しなければならないため、既存企業にとってはかなり好都合だといえる。

北欧2社はどうするのか

 もちろん、長い歴史を持つGSMAの全てのメンバー企業が、O-RAN Allianceが提示するオープン化の議題全体を、全面的に進めているというわけではない。

 特に大きな影響力を持っているEricssonは、組織間の協業にはそれほど積極的でない可能性が高い。EE TimesはGSMAに対して、今後の方針や、共同的意思決定に至った方法などについて説明を求めたが、本記事の執筆時点ではまだ回答を得られていない。

 Ericssonは、Open RAN Policy Coalitionには参加しないことを決定した。米国EE Timesの取材については辞退したが、「オープンで公正な競争を信じている」とだけコメントした。5G(第5世代移動通信)の競争で優位に立つために、米国および他の政府は、技術にとらわれない政策を通じて、市場ベースのアプローチを維持すべきである。政策立案者の焦点は、スペクトラム割り当てによる5G展開のスピードアップと、ネットワーク展開の障壁を取り除くことにあるべきだ。

 Ericssonは、技術的な観点については次のように指摘している。「当社はオープン性を信じており、将来的にはオープンなインタフェースと多数のユースケースをサポートするために製品アーキテクチャを進化させる必要があると考えている。例えば、2020年は、仮想無線アクセスネットワークソリューションを追加していく」

 さらに、「米国のエコシステムは、シリコンからアプリケーションに至るまで、5Gにとって非常に重要なものであり、Ericssonは全ての主要なプレイヤーと連携していく」と強調した。

 Ericssonのこの姿勢は、同社が中国の通信事業者と良好な関係を維持していることが背景にあるのかもしれない。Ericssonは最近、中国の大手オペレーター2社と、RAN関連の製品で取引を獲得している。反対にNokiaは中国の無線アクセスネットワーク事業からは手を引いているが、5〜6年前はNokiaの売上高の約15%を中国が占めていた。

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