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» 2020年07月27日 11時30分 公開

湯之上隆のナノフォーカス(28):半導体産業はコロナに負けない! 製造装置市場の動向を読み解く (2/4)

[湯之上隆(微細加工研究所),EE Times Japan]

製造装置の出荷額の成長を阻んだ要因

 筆者は、製造装置の出荷額が、なかなかITバブル時を超えられなかった要因が少なくとも二つあると考えている。一つは最先端の半導体メーカーの減少、もう一つは各種製造装置のスループット(1時間当たりのウエハー処理枚数)の向上である。以下で、説明しよう。

 第1の要因は、最先端の半導体メーカーの減少である。例えば、DRAMについては、2000年以降に、日本企業が軒並み撤退していった。また、2000年代に台湾企業の多くが撤退に追い込まれた。さらに、ドイツのInfineon Technologiesから2006年に分社したQimonda(キマンダ)が2009年に倒産し、日本企業として1社残っていたエルピーダメモリも2012年に倒産して米Micron Technologyに買収された。その結果、DRAMメーカーは、実質的に、Samsung、SK hynix、Micronの3社に集約された。

 また、ロジック半導体においても、最先端の微細化を続ける半導体メーカーが次々と脱落していった。2018年8月に、米GLOBALFOUNDRIESが10nm以降は開発しないことを発表して以降、最先端の微細化を追求する半導体メーカーは、Intel、Samsung、TSMCの3社に集約された。そして、2016年以降、Intelが10nmの立ち上げに失敗し続けているため、7nm以降の微細化では、TSMCとSamungの2社に絞られつつある。

 このように、最先端の半導体メーカーが淘汰されていったため、最新の製造装置について、巨額の設備投資を行える企業が減少し、製造装置の出荷額が伸び悩んだと考えられる。

自分で自分の首を絞める結果に

 第2の要因は、製造装置メーカーが、企業努力によってスループットを向上させたことにある(何とも皮肉な結果である)。

 例えば、2007年頃に、露光装置としてArF液浸が登場した時、そのスループットは、カタログ値で1時間当たり約130枚だった。しかし、現在のスループットは優に250枚を超えている。つまり、2007年に2台必要だったArF液浸は、現在なら1台で済むということになる。

 もっとすごい例としては、洗浄装置がある。洗浄装置には、ウエハー50枚を一度に処理するバッチ式と、ウエハーを1枚ずつ処理する枚葉式がある。当然、バッチ式の方が枚葉式より、スループットが大きかった。しかし、バッチ式には、洗浄で剥がれたゴミがウエハーに再付着する欠点がある。枚葉式には、再付着の問題が無いが、スループットは悪い。

 ところが、枚葉式装置で、1台のプラットフォームに搭載する洗浄槽を、4→8→16→24チャンバと増やしていったため、スループットがバッチ式と遜色ない800枚を超えるようになった。その結果、2008年を境に、洗浄装置の主役がバッチ式から枚葉式へとパラダイムシフトしたのである(図3)。

図3:洗浄装置の出荷額動向 出典:野村証券のデータを基に筆者作成(クリックで拡大)

 これは、バッチ式の唯一の長所がスループットだったが、ゴミの再付着の問題が無い枚葉式が同程度のスループットであるなら、バッチ式を使う理由がなくなったことによる。なお、2014年頃からバッチ式の出荷額が増大しているのは、3次元NAND型フラッシュメモリ(以下、NAND)の製造にバッチ式のウエットエッチング装置が必要で、その需要が大きくなったことを反映している。

 話がそれたが、このように、製造装置メーカーが企業努力により、劇的にスループットを向上させても、製造装置の価格は、それに比例して上昇しなかった。つまり、製造装置メーカーは、自分で自分の首を絞める結果になってしまったのである。

 では、なぜ、2017年以降、製造装置の出荷額が、2000年のITバブルを超えて、急成長し始めたのだろうか?

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