図5は、AMDのハイエンド向けプロセッサ「Ryzen Threadripper」である。最大64コア/128スレッドのバージョンをラインアップするモンスタープロセッサだ。32コア/64スレッドの「Ryzen Threadripper 3970X」、64コア/128スレッドの「同3990X」のパッケージLIDを取り外したものが右の2つ。右上は64コアでシリコンが9個、右下は32コアでシリコンが5個となっている。
中央の大きなシリコンがI/O(USBやSATA、DisplayPortなど)、パッケージ内左右にはおのおの8コアのCPUが搭載されている。4個の場合には4×8で32コア、8個では64コアとなる。巨大シリコンを1つ作るのではなく、組み合わせによって多くのラインアップを生み出しているのである。ベースシリコンは、I/Oとプロセッサの2つだけ。歩留まりによって16コアなど、さらに下位のバージョンもラインアップ化する。
図6は、AMDの7nmプロセッサを用いたラインアップである。シリコン上には2017年の年号があり、Intelの10nmと同時期に開発が行われていた。同じシリコンを1個だけ使用したものがRyzen 3/5/7としてリリースされ、2個使ったものがRyzen 9、4個以上はRyzen Threadripperという構成となっている。
1つのシリコンを組み合わせることによって、ハイエンドからミドルレンジ、普及モデルまでをそろえている。費用を最小化し、“松竹梅”を作り分けるのは、シンプルではあるが決断は難しい部分である。松竹梅のプラットフォームを別々に作りたがるのは、技術者の生来持つ特質であるからだ。設計や開発を最小化することをスタートにしている点こそが、AMDの賢さだと言えるのではないだろうか。
図7は、32コアのRyzen Threadripperとほぼ同等の性能を持つ、Intelの「Xeon W」である。Intelは1シリコン。一方のAMDは5シリコン。内部は全く別構造となっている。どちらも実際にはすごいことなのだが、この差が2社の明暗に密接に関わっている。いずれにしても、HPCも普及プロセッサも、今後も進化は続いていくだろう。
弊社としては、AMD、Intel両社の今後も抜かりなく丁寧に観察し、解析を進めていく。なお実際のシリコンは、弊社の入り口に常時展示してある。訪問の際には実物をじっくり観察し、両社の差を実感していただきたい。
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