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2THz帯HEBMで低雑音性能と広IF帯域幅を達成磁性材料を用いた独自構造で実現

情報通信研究機構(NICT)は、磁性材料を用いた新構造の超伝導ホットエレクトロンボロメーターミキサー(HEBM)を開発した。試作した2THz帯HEBMは、約570K(DSB)の低雑音性能と、約6.9GHzのIF帯域幅を達成した。

» 2020年09月07日 11時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

超伝導と金属電極薄膜の間にNi薄膜を挿入

 情報通信研究機構(NICT)は2020年9月、磁性材料を用いた新構造の超伝導ホットエレクトロンボロメーターミキサー(HEBM)を開発したと発表した。試作した2THz帯HEBMは、約570K(DSB)の低雑音性能と、約6.9GHzのIF帯域幅を達成した。

 HEBMは、超伝導ストリップ(微小な超伝導薄膜片)を2つの金属電極の間に配置した構造となっている。超伝導ストリップは、入射電磁波のエネルギーによって、「超伝導」と「常伝導」の状態を遷移する。HEBMはその際に生じる大きな抵抗変化を利用するミキサー素子である。

 研究チームは今回、超伝導と金属電極薄膜の間に磁性材料のNi(ニッケル)薄膜を挿入した。新構造のHEBMに電磁波を照射すると、照射電力によって超伝導ストリップ内の電子温度が上昇。これにより、超伝導転移温度(Tc)を越えた超伝導ストリップの一部領域には、常伝導領域(ホットスポット)が形成される。

左はHEBMの構造や2THz帯HEBMの顕微鏡写真、右は従来型と磁性薄膜を用いたHEBM構造の概略図 出典:NICT

 照射する電磁波に、信号源(Sig)と局部発振源(LO)を用いると、これらの周波数差による振動でホットスポットのサイズが増減。これによってインピーダンスが変化し、IF信号出力が生成される。HEBMの動作周波数は、その構造や寸法に制限されるため、数十THzまでのミキサー動作が可能になるという。

 研究チームは今回、超伝導ストリップ長が0.1μmのHEBMを作製し、その特性を評価した。この結果、測定周波数が2THzにおいて、量子雑音限界の約6倍となる極低雑音動作を実現した。2THzを用いたIF帯域評価でも、従来構造のHEBMに比べ約3GHzも拡大することを確認した。動作温度は4Kで評価した。

2THz帯HEBMのIF帯域評価系とNi-HEBMのIF帯域評価データ 出典:NICT

 研究チームは今後、2THz帯HEBMの早期実用化に向けて、導波管型HEBMの開発に取り組む計画である。

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