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ReRAMを活用して自立型のAI学習性能を向上イスラエルのWeebit Nano(1/2 ページ)

次世代メモリ技術の開発を手掛けるイスラエルのWeebit Nanoは、シリコン酸化物(SiOx)抵抗変化メモリ(ReRAM)技術を活用した最新の研究成果を発表した。同社が開発した脳からヒントを得た人工知能(AI)システムは、学習タスクを監視せずに実行して、高精度な結果を提供することができるという。

» 2020年09月11日 11時30分 公開
[Gary HilsonEE Times]

ReRAMベースのハードウェア

 次世代メモリ技術の開発を手掛けるイスラエルのWeebit Nano(以下、Weebit)は、シリコン酸化物(SiOx)抵抗変化メモリ(ReRAM)技術を活用した最新の研究成果を発表した。同社が開発した脳からヒントを得た人工知能(AI)システムは、学習タスクを監視せずに実行して、高精度な結果を提供することができるという。

 この研究は、イタリアのPolitecnico di Milano(ミラノ工科大学)の研究チームが実施し、Weebitとの共同論文として最近発表された。同論文は、WeebitのSiOx ReRAMをベースにしたAI自己学習デモについて詳述している。同メモリ技術は、「NAND型フラッシュメモリと比べて1000倍の処理速度、1000分の1の消費電力、100倍の耐久性を実現できる可能性がある」としており、NANDフラッシュの後継メモリの有力候補と見られている。また、WeebitのSiOx ReRAMは、既存の製造プロセスを活用できる点もメリットだ。

 ReRAMは、AIへの応用において複数の研究機関から注目されてきた。ミラノ工科大学は、WeebitのReRAMを使って、畳み込み型ニューラルネットワーク(CNN)の効率とスパイキングニューラルネットワーク(SNN)の可塑性(参考:「神経の可塑性」(コトバンク))を組み合わせて、以前に取得した情報でトレーニングしたタスクを保持したまま、新しいことを学習できるハードウェア設計を開発した。さらに、同システムでは、自立型AIシステムでの生涯学習が可能なソリューションの実現に向けて、省電力のために動作周波数を変化させているという。

Weebit NanoのReRAMセルの構造。現在のプロセス技術を用いて製造できる 出典:Weebit Nano

 人工ニューラルネットワーク(ANN)は、人間より優れた物体認識能力を備えているにもかかわらず、訓練されたタスクを保持したまま新しい情報を獲得することができない。Daniele Ielmini教授率いる同研究チームはこの点に着目し、SiOx ReRAMベースのハードウェアで、畳み込みANNの効率とスパイキングネットワークの可塑性を統合することに成功した。

 Ielmini氏は、EE Timesのインタビューに対し、「この研究では、回路が省電力のために動作周波数を可塑的に変化させ、最大50%がトレーニングされていないタスクの継続学習を実現できることを実証した」と述べた。「これによって、分類が最適化され、フィルターの再トレーニングが可能になり、標準的なANNが壊滅的なダメージを受けることがなくなった」(同氏)

 さらに、「これまでのAIハードウェアの最大の課題は、学習できることに制限があることだった。例えば、ハードウェアが特定の数字を認識するようにトレーニングされている場合、認識可能なのはトレーニングされた数字のみで、追加の数字は認識できない。同様に、数字の認識ができるからと言って、文字を認識できるようになるわけではない」と説明する。

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